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内山書店と中国〜変わらぬ絆と新時代の交流物語(前編)

CRIPublished: 2024-10-03 21:06:57
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2021年7月、上海内山書店の営業停止から実に75年余りが過ぎた時、「内山書店」という看板を掲げた店が天津で開店しました。商標は内山家から中国での独占排他的使用の権利が与えられたもので、経営は中国側が独自によるものです。

店を手がけたのは、天津テレビでドキュメンタリー番組を制作していたディレクターで、当時は30代後半だった趙奇さん(現在42歳)。海外書店のシリーズドキュメンタリーの撮影がきっかけで籬さんと知り合い、「内山書店を中国でもう一度」と構想を温め続けてきました。それを現実とすべく、2015年から場所探しから着手し、5年をかけて開店にこぎ着けました。その間、新型コロナウイルスによるパンデミックが起き、幾多の困難に襲われました。資金を集めるために自宅の売却まで覚悟したという趙さんの熱意は、「本物だった」と籬さんは言い、商標使用の依頼を受託した理由もそこにあると明かしました。開店が危ぶまれる状態にあった「内山書店」は、最終的に、天津市の支持を得て、天津出版伝媒集団により開店作業が進められることになり、趙さんは新たに設立された天津内山書店有限公司の総経理に任命され、今日に至っています。

2021年7月10日、天津内山書店オープニングセレモニーであいさつする内山書店の内山籬会長と内山深社長

開店の日には、魯迅、郭沫若、田漢、郁達夫の子孫らをはじめ、内山完造と親交のあった中国の友人の末裔たちが多く集まり、盛大なセレモニーが開かれました。当時はまだコロナ禍で国境を跨いだ移動がままならぬ中、籬さんと息子の深さんはビデオメッセージを送り、中国で新たに始動した内山書店に期待を寄せました。

「中国人と日本人との交流を促し、相互理解という点で力を発揮していただきたい」

2024年5月、天津内山書店で開かれた大学生との交流イベント、中央が趙奇総経理

天津内山書店の1号店では、開業3年の間に150回余りのイベントが行われ、人と人が出会って交流する役割がしっかりと果たされています。中国国内で内山書店の店舗数が増え、盛り上がりを見せる一方で、「中国で内山書店が開店したニュースは日本でもたくさん取り上げられていて、『中国で支店を出したのですね』とよく言われるようになりました。その都度、説明をせざるを得ないんです」と、籬さんは苦笑気味に話してくれました。

「国と国との関係は、長い時間で見ていく必要があると思います。私は何よりも個人と個人の友人関係から発展していく、という内山完造の考え方を実行したいと思っています。または、日本人と外国人の関係というのは、それぞれ個人同士の付き合いからスタートすべきものだというふうに思います。政治的な関係がどうであろうとも、我々個人の友達関係が発展していけば、必ずや国と国の関係も良くなるはずであると考えております」

未来をこのように展望する籬さんもまた、完造・嘉吉譲りのぶれない姿勢が垣間見えました。

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