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内山書店と中国〜変わらぬ絆と新時代の交流物語(前編)

CRIPublished: 2024-10-03 21:06:57
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内山完造は書店の経営の傍ら、日本人が真に中国を理解するために多くの著述を残し、講演活動も精力的に行っていました。1947年12月、敗戦とともに上海から日本へと強制送還された完造は、帰国後2年ほど、嘉吉一家と一緒に暮らしていたそう。ただし、帰国翌年の2月から、「中国漫談」の全国行脚に出かけ、17カ月の間に800回あまりもの講演を行いました。

1950年秋、日本と中国の国交回復を目指して「日中友好協会」の結成大会が開かれた際、完造は初代理事長に就任。以降、完造は「日中の友好はまず中国を知るということであって、これが徹底こそ為さねばならんことである」を信条に活動を続けました。

籬さんは、「両親が許してくれないわがままでも、完造は聞き入れてくれたから、父や母よりも大好きだった」と言い、今も子どもの時の思い出で鮮明に覚えていることがあるといいます。

「講演旅行から帰って来る完造を、私が駅まで迎えに行くのですが、完造が列車から降りてきたのを見て、喜んで飛びついた瞬間に、腕が抜けてしまいました。腕は一回抜けると、何度も起こしてしまうらしいのですが、何度かそういうことをやってしまったぐらいに、大好きなおじさんでした」

1959年春、中学2年生になった籬さんは、二人の社会科の教諭からある頼み事をされました。「ずっと上海で活動していたおじさんの内山完造さんに、中国の話を聞きたい」と。籬さんは、完造に書店で話をしてもらうよう取り次ぎ、その際に自身もその講話を聴くことができたそうです。籬さんはそれをとてもありがたい様子で振り返りました。なぜなら、籬さんの記憶では、その時、完造はすでに病によって講演旅行がほとんどできなくなっていたからでした。

1959年9月、日本を発つ前の内山完造

同年9月、完造は中国人民対外文化協会から療養の誘いを受けて訪中。旧友に囲まれながら、楽しく思い出を語らっていたレセプション会場で、脳出血を起こし、そのまま帰らぬ人となりました。

北京で大勢の旧友の見守りの中で告別式が執り行われ、荼毘に付され、遺骨は1945年1月に上海で永眠した妻・美喜子と共に、上海万国公墓(現在の「宋慶齢陵園)に納められました。墓石には、微笑む二人の写真と共に、親交のあった文学者で翻訳家の夏丏尊(かべんそん)による追悼の言葉、「以書肆為津梁,期文化之交互。生為中華友,歿作華中土(書店を懸け橋として、文化交流を期する。生きては中華の友であり、歿して中華の土となる)」が刻まれています。

上海・宋慶齢陵園にある内山完造夫妻合葬墓

■「国の関係は個人同士の付き合いから」

内山籬さんは1945年生まれ。兄二人と姉一人の4人きょうだいの末っ子。子ども時代は、当時は東京・神田一ツ橋にあった「内山書店」の2階に、一家6人で暮らしていました。自宅に出入りする時は、中国の本がびっしり並ぶ書店の中を通っていたので、「(生活に)密着しすぎていて、中国のことを意識することはほとんどなかった」と言います。

籬さんは長兄と12歳も年が離れているため、高校に入った時、「兄たちはもう社会人で別の仕事をしていたため、家業を継ぐ人は自分しかいない」ということに気づいたそう。

大学は東京大学文学部に合格。家業のこともあり、第二外国語に中国語を選択しました。もっとも、高校時代から、内山書店の常連でもある東大の先生からは、「大学に受かったら、僕のところに来い」と前々から誘われていたのでした。

中国での留学はできなかった時代でしたが、籬さんは実に聞きやすく、発音もきれいな中国語を話します。流暢な語学力を身につけた背景を尋ねると、東大で中国語を教えていた故 工藤篁教授や、個人レッスンで世話になったという燕京大学出身の水世嫦先生のことなど、恩師の名前を次々と挙げ、昨日のことのように彼らとの思い出を語ってくれました。

まだ東京大学の大学院に在籍中だった1968年、内山書店に就職。翌1969年、広州交易会に参加するため初訪中。その後も、交易会で幾度となく訪中し、そのたびに書店を巡り、当時の公の輸入ルートでは入手できなかった書籍を一生懸命に見つけ出しては日本に持ち帰っていたそうです。

その後、社長に就任。その年1978年は、中国で改革開放が始まった年でもあります。籬さんは、中国と関わるようになってからの現在までの中国の変貌ぶりを、感無量といった様子で振り返りました。

「私が中国に行き始めて55年も経ちます。この間の変化を見てきた自分としては、今の中国はまるで別の世界のようです。多様化され、経済的にも発展しているし、皆さんの表情も変わりました」

2021年7月10日、天津で行われた内山書店のオープニングセレモニー

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