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小説家・古川日出男、北京で「アジア文学」を語る(2)

CRIPublished: 2019-04-02 20:23:00
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『平家物語』現代語訳での試みと、見えてきたもの

案内人:王小燕

3月19日放送の番組では、小説家の古川日出男さんが去年秋、北京外国語大学北京日本学研究センターで行った“「千年に一度」の文学的理解から始まった紫式部との共作”と題した講演会と交流会の様子をご紹介しました。今回はその続きです。

2年前に早稲田大学で開かれた、東アジアの文学・文化研究・ナショナリズムにフォーカスした学術会議において、中国の小説家・閻連科さんが「一つの国に閉ざされた文学ではなく、アジア文学という視点が必要」と提案しました。同じ場にいた古川さんはこの提案に触発され、初めての中国訪問に旅立つまでの9か月間、「アジア文学」の可能性について考え続けたそうです。

今回の北京外国語大学での講演では、古川さんはこのテーマをめぐって、自らの文学創作の視点から考えたことを話しました。

前回の番組でも紹介しましたが、福島県が故郷の古川さんは、3・11東日本大震災が起きた後、「千年に一度の災害」という当時よく使われていたフレーズを文学的に理解しようと思い、千年前の文学作品「源氏物語」を読み直しました。そして、貴族中心で民衆のことが全く描かれていないという紫式部の弱点を補う形で、「千年前の同業者」である紫式部と共作、共同創作を行うという形をとって、『女たち三百人の裏切りの書』と題した作品を書き上げました。この本は、王朝文学の世界を周辺から包囲しようと試みた作品だったと、古川さんは位置付けています。

実は、この本の創作と並行して、古川さんが2013年から取り組んでいた作業がありました。それは、平家の栄華と没落を描いた軍記物語『平家物語』の現代語訳です。

作者がはっきりしている、仮名文学の代表作である『源氏物語』とは違って、『平家物語』は琵琶法師の語りが文字に書き起こされ、作者が特定の個人ではなく、字体も「漢字混じりの仮名書き」となっています。また、貴族の世界しか描いていない『源氏物語』と異なり、『平家物語』には戦や震災によるおびただしい数の民衆の死にも触れています。

そんな『平家物語』の現代語訳に取り組むにあたって、古川さんは作品をどう解釈し、どのような悩みを抱え、またそれをどう打開したのか。さらに言えば、日本の「国民文学」たる古典と向き合うことにより、「アジア文学」の確立に向けた共通の土台を見つけ出す上でどのようなヒントが見えたのか、詳しくは番組をお聞きください。

◆古川日出男氏の北京外大での講演内容

<日本の「国民文学」に見る中国の古典と儒学>

『平家物語』は、日本文学の中では『源氏物語』と並んで有名な古典です。しかし、『源氏物語』と比べると変わっています。まず、ジャンルが「語り物」というものです。文学というより、むしろ芸能ですね。琵琶法師(びわほうし)が実際に琵琶を持って演奏しながら、節を付けて歌っていく。それで物語を語る。基本的には最初に語りがあって、それから言葉に変わって、文字に書き留められていきました。

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