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作家・伊藤比呂美さん 中国のリアルと若者へのエール

CRIPublished: 2024-03-19 15:37:46
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――中国の大学から講義の依頼があったら、一番伝えたいメッセージは?

やっぱり自由に考える、フレキシブルに考えるということですかね。私の言っている「自由に」というのは、「自分らしく」ということです。たとえば私は日本の大学で女子学生に最初に言ったのは「地声で話せ」ということでした。かわいらしいアニメ声なんかじゃなくてね。「自分らしく」あること。そういうことを中国の学生も伝えると思います。

■生まれ変わっても「女」

――68歳の今と55歳頃で、死生観に変化はありましたか?

すごく変わりましたね。私はまず、母が死に父も死にました。それを通して、仏教に出会い、お経に出会ったんですよね。それから何年かして、今度は夫が死にました。親っていうのは、ある意味送り出して当然みたいなところがある。でも、夫が死んだ後の空虚感というのは、これまでなかった体験。ちょうど娘たちが巣立って、夫と2人になってしばらくしてからのことだったし、アメリカにいたでしょう?どうやってこの空虚の中で生きてくんだろう?と思ったら、早稲田から来いっていう話が来て、「行きます」となったんですよね。今、同世代の人たちが死に向かっていく。これは寂しい。そういう自身の体験の投影もあり、時期によって作品のトーンも明るくなったり、暗くなったりしています。

――そうした経験の中で、人生の意義についてどう考えていますか。

それはもう、父や母、犬やみんなを見ていて、「みんな死ぬまで生きるんだな」と思った。すごく単純な言い方ですけど、「いつか死ぬ、それまで生きる」のが、命あるものの“定め”。そういうものなんだなと理解しました。

見ていたら、母も父も夫も犬も、死ぬまで生きてるんですよ、ずっと。自分の生を一生懸命に。痛い時には「もう死にたい」とかと言っても、それはある意味ファンタジーです。痛ければ、看護師さんを呼ぶし、お腹が空いたら、どんな状態でも食べるし。それが最後まで、そうやって生きて死んだんですよね。わりと最近出した本のタイトルが『いつか死ぬ。それまで生きる』なんですけど、これは我ながら名言だと思いました(笑)。

――生まれ変われるとしたら、男女どちらを選ぶ?

もう一回「女」を繰り返したい。私の若い頃、「女だから、これができない」「女の子だから、これがダメだ」とかというのがいっぱいあったけど、なにかあると燃えるじゃないですか、「何くそ」とか思って。それが楽しかったですね(笑)。

■「AIには絶対書けない文章」

3月16日 CMGのインタビューに答える伊藤比呂美さん

――伊藤さんにとって「書くこと」とは?

水とか酸素とか、そういうもののような、なくなったら何もできないようなものですね。常に書くから、生きているという…・。

――AIが小説や絵、詩を作れるようになったことをどう思いますか?

私がやっている作業はAIには絶対できない、そういう自信があります。私がやっぱり一番好きなのは“文章”。最近「森林通信」という本を出したんですが、AIには絶対書けない文章を書いています。

――AIが進化する時代に、私たちは人間力をどう磨ければよいとお考えですか?

私の分野で言ったら、やっぱり“美”なんですよ。何を美しいと思い、何を感じないか、鈍感さも含めて。美を感じ取る気持ち。そこだと思う。私の場合は「文体」、つまり「詩」ということですけどね。だから、そこだけは「機械ごときに何ができるか」みたいな感じがあります(笑)。

――これから文学や詩の位置づけは変わると思いますか。

思います。AIが作ったものに慣れてきたら、読者たちが変わってくるので。もうすでに変わっていますよね。そういう読者たちには、多分、私の文章は分からないだろうと思います。すごく悲しいことだけど。AIが書いた文章と、私の書いた文章を見て区別ができる人がいたら、それは私の本当の読者だって思う。でも、どんどん減っていく……。それが減っていって、誰も読まなくなっても仕方がない。

でも、何百年か後に、どこかの大学のすごく変わった人、変人だって言われながらコツコツ研究をしているような人に見つけてもらって、「昔、伊藤比呂美という人がいて、こんな文章で女の人生について書き、こんな文章で木の話を書いていた。めっちゃ面白いな」と論文を書いてくれたらいいなって思っています(笑)。

――考古学的な対象になるということですね。

そうそう(笑)。「なんか、昔は『木』というものがあったらしいよ」「根っていうのがあって、こう伸びていって、緑色で」とか、そこから調べなくちゃいけないみたいな時代に見つけてくれたらいいなと思う。そんな誰かが未来に私の本を読んで、「どうもこの文章は他の文章と違う。これは何だろう?」と疑問を持ってくれたら幸せですね。

3月16日 出版社が企画した交流会でズンバを楽しむ伊藤比呂美さん

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