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【追悼特集】北京放送リスナー&『人民中国』愛読者の神宮寺敬さんをしのぶ(前篇)

CRIPublished: 2023-04-11 19:52:33
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武田神社(甲府市)から山に向かって徒歩約15分。甲府の「奥座敷」として知られるのどかな田園地帯に、神宮寺おじさんの家があります。庭先からは甲府盆地を一望でき、南アルプスの連峰が見えます。

私は2002年7月、北京放送16人目の研修生として、ここで半年間ホームステイをしました。

神宮寺さんの自宅からの眺め

朝6時頃、柴犬レオの鳴き声を合図におじさんが起床。犬の散歩の後は朝食の支度をします。綾子おばさんは数年前、事故で手に大けがを負い、以後この家ではおじさんが炊事担当です。

ご飯に梅干し、みそ汁が定番の朝食ですが、米は自分の田んぼで取れたもので、梅干しはおばさんの手作り。山にあるウメの木から採って漬けたものです。みそ汁も、手作りみそと煮干しを使ったおじさんの特製。普通の家庭料理ですが、この家にしかない味です。

朝食の前に重要な「儀式」があります。食卓の側にある仏壇に向かって般若心経を唱えます。

「ああ、今日もすらすら読めたので、まだボケていない」という感想も忘れません。

食卓では、たまに外国人の私が戸惑う言葉遣いも聞きました。

「ああ、今日のご飯はコワい」

「おじさん、落語で『まんじゅうコワい』というのは聞いたことがありますが、ご飯のどこがこわいのかな」。こんな感じで1日が始まります。

2002年 UTY研修中の筆者が神宮寺家で稲刈りを体験

当時82歳だったおじさんは、自ら創業した会社の社長で、毎日マイカーで通勤していました。週末は兼業農家となり、私も田んぼの仕事や畑の草むしりを手伝いました。

おじさんは、あるエッセーでこう書いています。「他人は私たちに、『中国の多くの娘さんを引き受けて大変ですね』という。私たち夫婦は日本と中国との友好を生涯の仕事、ライフワークと思い、楽しく続けていきたいと思っている」。中国人の若者を自宅に受け入れ、半年も共に暮らすことの大変さを苦にせず、むしろおじさんたちは、さまざまな会話の中からその時々の中国の様子を知ることができ、「勉強になることが多かった」と振り返っていました。ある晩のことでした。おじさんは自分が書いた随筆文を見せてくれました。新聞の投書欄に採用され、好評を得たエッセーです。「短い祝辞」という見出しで、副題は「お前愛しているよ」でした。

内容は、めい御さんの結婚式に出席した日に起きたことについてでした。その日、おじさんは車を運転していて追突事故に遭ってしまいました。頭の中が真っ白になった次の瞬間、妻・綾子さんの顔が浮かんだそうです。帰宅後、早速この話を綾子さんに話すと、綾子さんはうれしそうな顔になりました。それを見たおじさんは、「言葉にすることの大切さを知り」、それからは、「連れ添って40年口にしなかった『お前が好きだよ』を何かにつけて言うようになった」とユーモアたっぷりにつづっていました。とても心が温かくなるエッセーでした。

特技である碁石の手品を見せる神宮寺敬さん2016年夏撮影

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