伝統文化の魅力をもっとたくさんの人に~琵琶演奏家方錦龍さんに聞く
ご案内:王小燕&斉鵬
2021年の年越し番組「央視網絡春晩」に出演中の方錦龍さん、特製エレキ琵琶の初お披露目となる
この春節、中国中央テレビ(CCTV)の年越し番組「央視網絡春晩」には、鶴髪童顔の琵琶奏者の出場がありました。
彼の名は方錦龍さん(57歳)。琵琶奏者としての活動歴はもう40年以上に上ります。ネット上の超人気歌手のヒット曲の伴奏に、方さんは特製のエレキ琵琶を携えて登場。龍と唐草模様が施されたその琵琶は胴体が透き通っていて、青い電光を放っていました。
そんな方さんにはもう一つの顔があります。2019年10月末の日本。正倉院宝物の「螺鈿紫檀五弦琵琶」が陳列された東京国立博物館で、中日両国の演奏家が共演する「国宝コンサート」が開かれました。出演者の一人として、方さんは自身が復元した現代五絃琵琶を使って演奏に参加しました。
1963年、安徽省安慶の生まれ。安慶は伝統演劇「黄梅劇」ゆかりの地。方さんの父親は地元の劇団で弦楽器を担当。6歳から琵琶の稽古を始め、40年あまりの琵琶人生の中で50か国を歴訪。山東、広州、北京などを拠点に、伝統音楽の世界では不動の地位を手に入れた方さん。最近は人気バーチャル歌手との共演やSNSでの積極的な配信、ワイドショー番組の出演など、若者の文化に積極的に近づこうとしています。常に新しいことにチャレンジするその心意気に迫ってみました。
◆300種類の楽器が演奏できる
「中国には、大俗はすなわち大雅、雅俗共賞という言葉があります。つまり、低俗と優雅は紙一重で、真の美しさは分かりやすく、どんな人でも楽しめるものだという意味です」
何となく雲の上の存在だという民族楽器の演奏家のイメージを打ち破り、方さんはどんな時も微笑みを絶えず、どんな人とも気楽に接し、ユーモアたっぷりの話し方をしています。
琵琶奏者ではありながら、彼が演奏できる楽器は8000年前の骨笛から現代のエレキギターまで、約300種類にも上ります。また、自宅には世界各国、各民族の伝統楽器約2000点も収集されています。
方さんの民族楽器の普及活動における定番の一つは、琵琶一面のみで聞かせてくれる世界音楽の旅です。彼の爪弾きは、世界各地の楽器の音色を再現します。北京の伝統芸能に使われる三弦から、インドのシタールや打楽器のタブラー、スペインのカスタネット、欧米のクラシックギターにフォークソングの伴奏に使われるアコースティックギター、そして、現代のエレキギターなどと幅が極めて広い。
「琵琶はその誕生の時から、様々な文化が混じっていたため、世界各国の音楽を比較的自在に表現できるポテンシャルがあります」
そんな方さんの目には、琵琶は民族音楽を奏でるただの伝統楽器だけでなく、東西の間を行き来しながらも融合して新しいものが生まれるプロセスの生き証人としても映ります。
◆五絃琵琶の復元からエレキ琵琶の試作まで
ところで、中国や日本でいま弾かれている琵琶は、普通は4弦です。1985年、22歳の方さんが日本で開かれたシルクロードがテーマの演奏企画に招かれ、北海道から沖縄まで日本各地をツアーしました。その時に、若き方さんの心を揺さぶった出来事がありました。日本のテレビで、正倉院宝物の中に、螺钿紫檀五弦琵琶があることを初めて知りました。