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新中国対日戦犯裁判の意義 再評価訴える ――上海交通大・石田隆至副研究員に聞く(下)

CRIPublished: 2023-09-28 15:02:40
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これに対し、更生教育を重視し、死刑・終身刑を一人も科さなかった新中国の戦犯裁判では、釈放・帰国後にその多くが反戦平和活動の列に加わりました。少なくとも反動派に回帰した者はほぼいませんでした。 厳罰より、「再び戦争の担い手にさせない思想的土壌や政治・社会関係」を生み出すことが、戦争の再発防止に繋がると考えられていた点は、もっと評価されるべきだといえます。

拙著で見たように、戦犯の教育改造が一定程度成功し、認罪・反省に至っていたこと、当時の中国が平和主義、国際主義に基づいて積極的に平和を作り出す外交を展開していたこと、これらの点は、欧米式の平和主義とは異なる方法や成果を示したことになります。とりわけ、戦犯たちが更生し、平和の担い手になったこと自体は、新中国の平和主義が敵対国・民族間の対立の解消に寄与する可能性を示したと思います。

――今回、過去20年余りにわたる研究のとりまとめとして、この本を出版されましたが、このテーマについて、今後、研究面で残されている課題についてどのようにご覧になりますか。

現在の日本で拡がっている歴史改ざんや軍事費の増大傾向などを前にして、中国の人々の間では、寛大な対日戦犯政策には十分な効果がなかったという声も聞かれます。日本社会の無責任、無反省体質を直視すれば、そうした声があることも十分理解できます。それでも、当時1000名あまりの戦犯が認罪し、更生した事実を直視しなければ、先人が生み出した平和への可能性さえ葬り去ってしまいます。

すべての対日戦犯裁判(厳罰主義を採用した裁判を含む)のなかで、このような結果をもたらしたのは新中国の戦犯裁判だけです。その世界史的な意義をより豊かに捉え、発展させていくことが求められていると思います。そうした意味で、新中国の平和主義そのものが、より積極的に解明すべき研究課題といえます。

東京裁判などでは生じなかった平和的帰結がなぜ新中国裁判には表れたのか、そのメカニズムは今後いかにして世界的課題の解決に寄与しうるかを探求する必要があるでしょう。もちろん、“中国の平和主義”は、国際状況、国内情勢の影響下で生まれたものですが、社会学、法学、平和学、政治学、国際関係学、教育学、文学、心理学など多様な観点から深く検討することで、そこに内包されている一種の「普遍性」に迫ることは、学術の枠にとどまらない平和的貢献となるでしょう。

そのためにも、史料公開がさらに進んで「実事求是」がより可能になり、中国の平和主義の“話語体系”が発展することで、中国の知恵を世界と共有していくことを切に望んでいます。

【プロフィール】

石田隆至

上海交通大学人文学院副研究員、明治学院大学国際平和研究所研究員、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。専攻は戦後和解の歴史社会学・平和学。

【リンク】

『新中国の戦犯裁判と帰国後の平和実践』 執筆に寄せた思い ――上海交通大・石田隆至副研究員に聞く

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