日本語

日本は「漠然とした平和教育」よりも加害の歴史を伝えよ~ジャーナリスト・乗松聡子さんに聞く

CRIPublished: 2023-08-18 22:53:44
Share
Share this with Close
Messenger Pinterest LinkedIn

また、長崎の平和公園内にある、「中国人原爆犠牲者追悼碑」にはこう書かれています。

「戦時中日本は約4万人の中国人を強制連行し、炭鉱や鉱山、港湾、土木工事などで過酷な労働を強いてわずか1年余りの間に6,830名もの死亡者を出しました。」

長崎では三菱工業の高島炭鉱、いわゆる軍艦島と言われる端島炭鉱、崎戸炭鉱、日鉄鉱業の鹿町炭鉱に1,042名が強制連行され、115名が死亡しました。このうち、32名が長崎の浦上刑務所に拘留されたまま原爆の犠牲になりました。

長崎の「中国人原爆犠牲者追悼碑」

私は8月6日と9日の原爆の日は、強制連行された上に、原爆で殺された朝鮮や中国の人たちの無念に、思いを馳せなければいけない日だと思っています。

――乗松さんは、8月10日に開かれた集会では、「8月6日と9日、原爆投下の日で日本の被害ばかりに注目がいく時期だからこそ、長崎と広島の加害性について、強調したく思う」と話しましたが、そう思わせた背景について教えてください。

まずは、長崎も広島も原爆投下で凄まじい被害を受ける前の大前提として、加害の地であったからです。

長崎の人たちはどれだけ知っているでしょうか。長崎にある大村飛行場は、中国への渡洋爆撃の起点でした。笠原十九司さんの本『南京事件』によりますと、1937年8月15日、「南京を爆撃したのは、海軍木更津航空隊の新鋭機=96式陸上攻撃機20機だった。この日午前9時10分、長崎の大村基地を発進した爆撃機隊は、東支那海を横断し、台風による悪天候をおして南京まで、洋上600キロをふくむ960キロを4時間で飛翔、『南京渡洋爆撃』を敢行したのである」。

同様に、日本軍の渡洋爆撃の基地とされた、韓国の済州島のアルトゥル飛行場では毎年南京大虐殺の追悼式が行われています。当時日本が植民地支配していた、済州島の人たちには責任がないにもかかわらずです。

済州島アルトゥル飛行場格納庫跡地での南京大虐殺追悼集会2019

広島も加害の地です。広島は日清戦争(中国では「甲午戦争」と表記)では大本営が置かれ、天皇が直接指揮を執った軍都でした。今年G7が開催された宇品港という場所は、日清戦争以来、日本の侵略戦争の出撃地点、輸送拠点でした。

また、今年は1923年の関東大震災後大虐殺の100周年です。6000人以上の朝鮮人、また800人にも及ぶと言われる中国人が惨殺されました。これは人類史上でも最大規模と言える、日本人によるヘイトクライムであり、日本政府は責任を取る必要があります。日本人はこの歴史を学び、記憶する必要があります。

■批判的な目を養い、人と人との交流を大事にする

――さて、中日平和友好条約締結45周年に寄せる思いは?

私は高校時代の留学からカナダに移民して以来、中国や中華系の友人たちとの交流で感じたことは、中国の人たちは、欧米列強や日本に侵略された「屈辱の100年」を決して忘れないということです。

日本は日清戦争の旅順大虐殺、平頂山大虐殺、南京大虐殺、戦時性暴力、細菌戦や毒ガスなどの許されない犯罪を中国の人に対して犯してしまいました。中国の友人が私に話してくれたことがあります。「日本と中国の間には2000年の歴史がある。近現代における侵略戦争は、この長い歴史の中ではわずかな期間であり、乗り越えることができる」と。ありがたい言葉だと思いました。

しかしその友好も、日本人が常に加害の歴史の事実を学び、それを記憶し、継承し、二度としないという決意を更新し続けてこそ、初めて実現が可能なものだと思います。

――最後に、平和構築に向けてのメッセージをお願いいたします。

今年は、1953年の朝鮮戦争停戦協定70周年の節目でもあります。この戦争は日本から解放されたはずの朝鮮が分断され、内戦状態となり、最後は米中戦争の様相も呈し、日本も加担しました。この戦争でさえまだ終結できていないのに、今、また米国と、日本を含む同盟国は新たな戦争を中国に仕掛けようとしています。広島と長崎が「加害の地であった」と言いましたが、実は過去形ではなく今もそうなのです。戦前は大日本帝国の中国侵略の拠点であり、現在も日米の基地が張り巡らされ、再び侵略戦争の拠点になってしまっています。

市民にできることは政治参加することはもちろん、目の前に溢れる嫌中情報に踊らされず、批判的な目を養い、人と人との交流を大事にすることが、平和を促進し、戦争を防ぐことであると、私は信じております。

【プロフィール】

乗松聡子(のりまつ さとこ)さん

ピース・フィロソフィー・センター代表、「アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス」エディター

東京都生まれ。バンクーバー九条の会共同代表。高校時代の留学含め、カナダ西海岸に通算28 年在住。

主な著書:

(編著)『沖縄は孤立していない 世界から沖縄への声、声、声。』(金曜日)など

現在は「琉球新報」に「乗松聡子の眼」コラムシリーズを連載中

◆ ◆

この番組をお聞きになってのご意見やご感想は、nihao2180@cri.com.cn までお願いいたします。件名は【火曜ハイウェイ係りまで】。お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号 中国国際放送局日本語部】までにお願いいたします。皆さんからのメールやお便りをお待ちしております。

首页上一页123 3

Share this story on

Messenger Pinterest LinkedIn