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上野千鶴子ブーム中国女性の本音と社会背景

CRIPublished: 2023-05-30 12:02:24
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上野氏が中国人にとって身近な存在となり得た背景には、ネット空間の拡大があります。世界のどこにいようとも、人々は気軽にネット空間にアクセスし、さらには情報の送り手と受け手が直接対話できるようになりました。そればかりではありません。現代社会においては、中国、日本の区別なく、若者たちの育つ環境がどんどん似たようなものになっているという点も注目されています。これは、上野氏と中国人学者の戴氏に共通した認識でもあります。

上野氏は対談の中で、自分の本が中国で共感を得られた共通の背景として、「新自由主義の影響下で育ったこと」「ともに少子化世代であること」の2点をあげました。

戴氏はベストセラーとなった『往復書簡限界から始まる』を例に、「この往復書簡は、今60代という自分と同じ年代にとっては距離感がある。だが、若い中国人女性たち間で情熱的に読まれ、議論されたのは、彼女たちの琴線に触れたからだ。彼女たちが成長する中でぶつかる悩みを正確に描き出していたのだろう」と分析しています。戴氏は、とくに中国が急速に豊かになっていく中で育った「一人っ子」世代(1980年代からの「一人っ子政策」のもとで生まれた世代)の女性について、「無数の選択肢があるように見えながらも、実は(日本の同年代女性と同様に)しがらみが多く、どう選択すれば良いかが分からず、迷いだらけの人生を歩んでいる」とみています。

■家庭の在り方の変化も背景

1978年以降の改革開放による急速な経済成長で、中国の人々の暮らしは以前と比べものにならないほど豊かになりました。それに伴い、結婚や家庭の在り方、人々の生き方そのものにも大きな変化が生じました。

北京の雑誌社勤務のTさんは44歳の未婚女性です。瀋陽出身の彼女は大学卒業後に上京。世界中を駆け巡って取材する、充実した日々を送ってきました。これまでの人生を振り返り、「女性である事を意識したことはなく、また意識されることもなく、普通に働ける人間をめざして楽しく頑張ってきました。気がつくと、結婚適齢を逃していました」と言います。2年前、瀋陽にいる母が突然ガンを患ったため、看病のため半年ほど休職しましたが、その甲斐も虚しく母は亡くなりました。Tさんは、今後の人生をどう生きていくのか、様々なことについて考え込み始めました。そうした中での上野氏の本との出会いは「考え方に幅をもたらせてくれた」と語ります。

中国国家統計局と民政部のデータによると、中国の婚姻率(人口千人に対するその年の婚姻件数の割合)は2013年の9.9%をピークに年々下がり、2020年は5.8%にまで落ち込みました。また、地域格差も顕著になり、豊かな地方ほど婚姻率が低くなる傾向が見られます。一方、離婚率は2000年の0.96‰から2020年には3.1‰に上昇。世帯ごとの平均人口も1953年の4.3人から2020年の2.62人へと減少しています。

社会学者の梁建章氏はこの一連の数字を、「家庭の社会的機能の衰退」だと指摘しています。戴氏もまた、「改革開放によって、女性が労働力として市場にどんどん吸収されていった。市場経済を背景にしたジェンダー革命と社会の変化によって、中国の家庭の在り方に危機が生じ、さらに家庭崩壊の道へと向かいつつある」と切り込んでいます。

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