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中日共通国語教材・魯迅「故郷」発表100年中日の学者らが交流会

CRIPublished: 2021-06-22 13:10:00
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中国の文豪魯迅の代表作品『故郷』の発表から100年になることを記念するオンライン学術シンポジウムが19日に、中国と日本をつないで開かれました。『故郷』は中国・日本の両国において、長く中学国語教科書に採用され続けていることが開催の背景です。双方の学者、中学校の国語教師ら計12人が発表者・パネリストとして参加しました。

◆次の百年を見据え読みを深めたい第一歩に

シンポジウムでは、都留文科大学名誉教授の田中実さんが『故郷』の読み方に関して氏が提起した、「第三項」理論を基に基調講演を行いました。

田中さんは、「通常の読書行為は、読者(主体)が作品(客体)を読むという二項の相関関係として捉えられているが、作品そのものは永遠に捉えられない『客体そのもの』、〈了解不能の他者〉である。これを『第三項」』と定義している。〈近代小説〉の神髄は、その『第三項』を抱え込んでいることにある。『故郷』に、一人称の語り手『私』を『私』と語る〈機能としての語り手〉を捉えることが必須で、この〈機能としての語り手〉が一人称の語り手の視線を超えて、作品全体を仕組んでいると考えている」と指摘しました。

シンポジウムに出席した中国側の学者には、浙江越秀外国語学院講師の李勇華さん、西安交通大学外国語学部教授の霍士富さん、復旦大学日語語言文学学部副教授の鄒波さんなど日本文学や比較文学分野の研究者だけでなく、北京大学中文学部の呉暁東教授を代表とする中国文学専門の学者も加わり、議論を深めています。双方の研究者からはテキストそのものだけでなく、ハイデッガーの哲学や魯迅と同時期の作家・カフカと比較するなどの視点からの議論も行われました。

さらに、両国での「教育実践」のセッションでは、山梨県北杜市立武川中学校の国語教師・山本富美子さん、魯迅の生まれ故郷である紹興市第一初級中学の「語文(国語)」教師・陳彦羽さんが『故郷』の指導方法をめぐりそれぞれ発表を行いました。

紹興市第一初級中学・陳彦羽先生の発表から

今回の記念行事は都留文科大学特任准教授・周非さんの精力的な企画と運営により開催が実現したものです。周さんは、「『故郷』発表100周年を契機に両国の学術交流を深めたい」という思いから、今年1月に両国の大学生を対象にオンライン討論会を開き、今回がそれに続いての第2弾となります。

「『故郷』は両国の学者が共通して興味を持つ研究対象で、それだけ魅力的な作品です。次の百年を見据えた、『故郷』の新たな『読み方』を日中双方の研究者や現場の先生方と模索し、理解を深めるための良いスタートを切りたい」と企画に込めた思いを語りました。

シンポジウムは昼休みを挟み、午前と午後に分かれて開催され、ZOOMを通じてその様子がライブで中継されました。

◆「安定教材」としての『故郷』に新しい「読み方」を

1921年に書き上げた「故郷」は魯迅が40歳の時、雑誌『新青年』(1921年5月号)に発表され、のちに魯迅最初の作品集である『吶喊』(1923年)に収録されたもの。数十年ぶりに故郷に戻った時の見聞が胸中の複雑な思いとともに描かれています。中でも、「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」という結びの句は、中日両国で格言として幅広く知られています。

日本では、1960年代半ば(昭和40年代)以降、『故郷』は中学3年の国語教材に収録されるようになり、現在では5社の検定教科書すべてで採用されています。

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