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政治学者の目に映る、新型コロナと今後の世界~中国社会科学院日本研究所・楊伯江所長に聞く

CRIPublished: 2020-06-02 18:33:00
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確かに、中国人からすればトランプ大統領の主張、政策には賛同できないものがたくさんあります。当面の中米関係は良好とは言えません。しかし、こうした関係の悪化が「新冷戦」の開始になるかと言いますと、私は必ずしもそうなるとは思っていません。言い換えれば、いわゆる「新冷戦」という事態は回避が可能なものと見ています。その判断の理由はたくさん挙げられますが、ここでは2点だけを取り上げます。

まず、「冷戦」の成り立ちには複数の要件が必要です。その一つは国々の集団化、グループ化です。これは冷戦についてだけでなく、第一次世界大戦、第二次世界大戦の「熱い戦争」にとっても同じです。今の時代では、そうした事態はなくなりました。今の日本を例に挙げれば、中国とアメリカの間で二者択一(alternative)しなければならない、という単純化した構図ではないと思います。

次に、当面の関係悪化には、アメリカの国内政治というファクターが大きく効いているということです。特に、今年は大統領選の年という政治の節目に当たっていることもあります。

トランプ大統領の政策は、生産者の利益だけを反映していると思います。アメリカの消費者の立場に立ってみると、中国とデカップリング(切り離し)することは、本当に得なのでしょうか?これには、アメリカ国内ではまだ一致した結論には至っていないと思います。

地経学の台頭域内の連携がより深まる世界へ

――世界の多くの国は今、社会・経済活動の再開と感染症対策の両立という二重の試練にさらされています。この困難な状況が続く中、同じ北東アジアに位置する中国と日本、ひいては韓国も含めた3カ国協力の意義をどうご覧になりますか。

新型コロナウイルスがもたらした衝撃は世界的なものなので、その対応も世界的、地域的な視点で見なければなりません。中日両国が、自身の発展を実現するとともに、地域の発展をけん引することは、域内の大国として共有すべき責任だと思います。特に北東アジアでは、中日韓3カ国が隣り合って暮らし、同じ地域的な生態系の中にあるので、互いの協力ニーズが非常に高いように思います。

一般的に言いますと、生産拠点と消費市場の距離は、遠ければ遠いほどリスクが大きくなります。言い換えれば、海外投資のシフトは自国により近いところ、つまり域内に置くべきだということです。この発想から、今後は地政学(地理経済学)の影響を強く受けた、いわゆる「地経学的思考」が台頭するだろうと見ています。国際関係における地域化の動きが加速するかもしれません。

中国には世界のモノづくりの3割が集中しているため、今回のサプライチェーンの調整では重要な標的とされるでしょう。しかし、中国は国土の広大さから、自国内でフルセット型の経済構造を成立させることが可能だと思います。それに対して、日本や韓国は、周辺国、とりわけ北東アジア地域に依存しながら調整が迫られると思います。こうして、北東アジア域内の貿易が互いの貿易総額に占める割合が高まり、域内諸国の経済的依存度がさらに強まるのではないかと、私は見ています。

中国社会科学院日本研究所・楊伯江所長

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