日本語

中日の学者・専門家が語る「中国式現代化」 〜桂林銀行の新たな取り組みを例に〜

CRIPublished: 2024-08-06 20:37:21
Share
Share this with Close
Messenger Pinterest LinkedIn

■桂林銀行は人と人をつなぐ“パイプ役”

――他にはどんな変化がありますか?

川嶋 桂林銀行が人と人をつなぐことで、新しい変化も生まれました。

若手起業家が経営する養牛場を訪問したのですが、ここで驚いたのは、飼育場に臭いがないことでした。牛の飼料は周囲の農家から出るトウモロコシのカスや稲わらなどが原料となっていますが、これを発酵させるために、彼らが大学と共同開発した発酵促進剤が使われています。この促進剤にはアンモニアを分解する作用があり、飼料原料の発酵以外、飼育場に噴霧することで臭いが抑えられているのだそうです。牛糞は有機肥料に加工され、飼料の原料を提供する農家に還元されるほか、街路樹や家庭の樹木の肥料にも使われています。農業残渣や牛糞などを活用し、ゼロエミッションの仕組みが構築されているのです。

この成功には、経営者の努力はもちろん、多くの人の協力が不可欠でした。原料を提供してくれる農家や食品工場など、協力者の多くは桂林銀行の顧客であり、桂林銀行がパイプ役になることで、このゼロエミッションモデルが確立できたのです。こういったことは、銀行業務と直結するものではありませんが、銀行を貧しい農村部に根付かせ、拡大させるために必要な努力です。銀行の若い人たちも、地元を豊かにしたいということで、非常に熱意を持って実直な取り組みを続けています。

■中国の発展を支える「改革開放」と「身の丈イノベーション」

――さて、遅れていた広西が発展できたマクロ的な背景は?

張 カギは「改革開放」だと思います。その中で最も重要なのが「双循環(国内と国際の二つの循環)」です。

広西の「国内循環」のポイントは、広東省に隣接した立地にあります。広東省は早い段階で豊かになり、巨大な消費市場となりました。広西で生産される大量の果物や野菜、畜産品は、広東省をはじめ、珠江デルタ地域、さらに香港やマカオにも出荷されています。

「国際循環」は、日本を含む海外への果物の輸出や原材料の供給などです。さらに、中央政府の指示の下で、東南アジア全体との貿易も行われています。広西ではこのように「双循環」が形成されています。

川嶋 私は、人々のイノベーションの意欲を挙げたいと思います。

桂林では、多くの「身の丈イノベーション」が実践されていました。桂林銀行の簡易端末、養牛場の発酵促進剤、農産物の品種改良や栽培技術の向上などは小さな身の丈の変革であり、テンセントやHUAWEIのような大企業による最先端技術の応用とは全く異なるものです。しかし、そこには共通点があります。農村部の農家であれ、都市部の巨大企業であれ、イノベーションに取り組む人たちには、「自分たちの暮らしを少しでも良くしたい、少しでも便利にしたい」という思いがあり、実践があります。こうした意識の総和が中国のイノベーションの底力であり、産業発展の原動力なのだと思います。

【プロフィール】

張小勁

専門は中国政府と政治、政治学方法論、比較政治学など。清華大学社会科学学院学術委員会委員、清華大学国家ガバナンス研究院副院長、北京大学政府管理学院学術委員会委員。著書は『比較政治学導論』、『共和国大学受験史』など多数。

川嶋一郎

専門は企業誘致政策、中国事業戦略など。1992年(株)野村総合研究所入社。2014年より野村総研(上海)諮詢有限公司董事・総経理を経て、現職に至る。共著に『2020年の中国―「新常態」がもたらす変化と事業機会』、論文に「中国社会のデジタル化と若者」など多数。

【関連リンク】

「中国式現代化と中日の協力」学者対話会、北京で開催

◆◆

記事へのご意見・ご感想は、nihao2180@cri.com.cnまで。件名に【CRIインタビュー係りまで】と記入してください。お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号 中央広播電視総台亜非中心日語部】宛てにお送りください。スマートフォン用アプリ【KANKAN】の【アカウント一覧】にある「CRIインタビュー」からも直接投稿できます。ダウンロードは下のQRコードから。

首页上一页1234 4

Share this story on

Messenger Pinterest LinkedIn