日本語

中日の学者・専門家が語る「中国式現代化」 〜桂林銀行の新たな取り組みを例に〜

CRIPublished: 2024-08-06 20:37:21
Share
Share this with Close
Messenger Pinterest LinkedIn

「中国式現代化と中日協力」中日対話番組が7月25日、チャイナ・メディア・グループ(CMG)北京スタジオで収録されました。番組前半では、近年まで数年前まで極貧の農村が集まっていた広西チワン族自治区桂林市の農村を事例として、中国式現代化の特徴である「人民全体の共同富裕」「人と自然の調和的共生」の具体例を中日双方の専門家に紹介していただきます。

中国は2021年に絶対的貧困の問題を解消したと発表しました。その後は、貧困脱却の成果を固めながら、農村部をさらに発展させる「農村振興」の段階に移行しています。中国式現代化の現場であり、農村振興の現場では何が起きているのでしょうか。昨年から、桂林のフィールド調査をしている清華大学社会学院政治学科の張小勁教授、中国のデジタルイノベーションをテーマに研究を続ける清華大学-野村総研中国研究センターの川嶋一郎理事・副センター長のお二人にお話を伺います。

桂林市雁山区の養牛場の廖栄強総経理

■目を奪われた農村の“変化”

――桂林の農村で調査を続ける理由は?

張 私はこれまで、デジタル技術の普及が中国社会のガバナンスにもたらした変化を研究してきました。そこで、北京などの大都会だけではなく、農村部、それもかつて貧困地区だった農村ではどうなっているのかを知るために、貧困問題が際立つ広西チワン族自治区の桂林を調査対象にしたのです。

1990年代初め、広西の貧困人口は全国の10分の1を占めていました。とくに、桂林の山間部は、数年前まで特別困難地区(集中連片特殊困難地区)と呼ばれる極貧の村落が連なる地区でした。そして、調査を進めるうちに、地元の桂林銀行が農村振興で大きな役割を果たしていることに気づき、非常に興味を持ったのです。

――川嶋さんが桂林を訪問したきっかけは?

川嶋 張小勁教授からのお誘いがきっかけでした。実は、行く前にそれほど期待してはいなかったのですが、実際に現地を訪れた感想は、まさに「百聞は一見に如かず」。桂林銀行の若い行員たち、現地で出会った農村部のリーダー、地元の起業家の方々など、皆さんがとても生き生きと仕事に取り組み、経済的にも豊かになっている姿に目を奪われました。

近年、日中間の人的往来が停滞するなかで、メディアには「不動産バブル崩壊」「失業率上昇」といった報道が溢れています。また、この10 年ほどは、中国の経済発展といえば、デジタル分野を中心とした新興企業や最先端のイノベーションばかりが関心を集めてきました。 桂林の「農村振興」の現場には、そうした世界とは異なる光景が広がっていました。現地で出会った人々の地に足のついた活動は、私にとって「衝撃」でした。

■銀行業務を超えた桂林銀行の取り組み

――農村振興を支えた桂林銀行とは?

張 1997年設立の国有の地方商業銀行です。桂林市を中心に広西チワン族自治区のほぼ全域で事業を展開しています。もともとは都市部で事業を行っていたのですが、他の銀行との競争が激しくなる中で生き残りをかけ、2019年10月に「農村振興」に舵を切りました。

川嶋 桂林銀行の売上高を日本の地銀と比較すると、九州フィナンシャルグループ(鹿児島・熊本)や八十二銀行(長野)とほぼ同じ規模です。拠点網は4層構造になっており、大都市の中核支店、都市部と県の一般支店、そして農村部の郷鎮には「小微支行」(出張所)、末端の小さな村には「服務点」(簡易店舗)が設置されています。2019年以降、農村部の店舗網は急拡大し、特に「服務点」は2019年から23年にかけて3 倍増し、約 7000 店舗に達しています。

桂林・陽朔地区の山間部に広がるキンカン畑

――桂林銀行が果たした大きな役割とは?

張 現在のような活発な物流や商品経済の中では、キャッシュフローの大きさがネックとなりますが、この問題を解決したのが桂林銀行です。ある農村でのキンカンの生産を例に解説しましょう。

広西ではこの5年から7年で、農業技術が進み、キンカンの品質が大幅に向上しました。苗木が改良され、実が大きくなり、糖度も高くなりました。簡易的なビニールハウスなどの導入により、収穫期間が以前の1カ月程度から3カ月に延び、販売期間も長くなり、農家の収入も増えました。そして、生産技術の変化と同時に、農村の組織化にも変化が起きました。“合作社”が作られたのです。合作社は収穫、集出荷、販売を決め、できるだけ農家に有利な価格で買い取っています。キンカンが農村の貧困や物流の問題を解決し、経済を発展させるきっかけになるなんて、だれも想像していませんでした。

この過程で桂林銀行は、興味深い役割を果たしています。村々に小さな営業所である「服務点」を置くことで、農民たちが必要な金融支援を受けやすいようにしたのです。その結果、農家の収益は年々増加しました。ある400人規模の小さな村の「服務点」では、村人からの預金が毎年1億元(約20億円)を超えるようになり、とても驚きました。決済方法は現金ではなく、すべてオンライン決済になっています。

川嶋 私は観光業の例を紹介しましょう。桂林は「漓江の川下り」が世界的に有名ですが、現在は棚田の風景も現地を代表する観光地になっています。この観光開発のリーダー的存在となったのが潘保玉さんです。1971年生まれの潘さんは貧しい時代を経験してきた世代です。20代の頃に北京に出稼ぎに行った時は、都会に来ていく服が無く、村長からもらった古着を着て行ったそうです。

潘さんの村・桂林市龍勝各族自治県龍脊鎮大寨村の様子

1234全文 4 下一页

Share this story on

Messenger Pinterest LinkedIn