スノーボード佐藤康弘コーチ中日交流に寄せる思い
その際、中国に提示した条件は、「ずっと指導してきた日本の選手も同時に指導できるようにすること」。ひとつの大会で、異なる国の代表選手を同時に指導する。過去に例のないスタイルでしたが、中国側も理解を示しました。
北京冬季五輪では、ビッグエアの決勝で最高得点を取ったものの、メダルを逃してしまった選手がいます。佐藤コーチの門下生の大塚健選手です。日本の選手はコーチに不満を抱かなかったのでしょうか?その問いに対して佐藤コーチは、「トップの選手は、自分に何が足りなかったかをよく理解している。そして、次に向かって切り替える。何をすべきかが明確になれば、次のオリンピックに向かって、またさらに頑張っていくだろう」と、選手自身の力を信じる姿勢を貫いていました。
一方、シャオミンとの間には、「手を取り合って、中日のスポーツ交流に大きな仕事をしようぜ」という師弟の約束がありました。佐藤コーチにそう決意させた力の一つとなったのが、中国での次のような体験でした。
河南省の少林寺を訪れた時のことです。寺でお祓いをしてもらうために記名をすると、なんとなく不穏な空気が漂い始めました。すると、「“佐藤”という苗字は、中国の戦争映画・ドラマでは、よく悪役に使われる苗字だ」と通訳が説明。驚いた佐藤コーチはこう心に誓いました。
「“佐藤”を、中国で響きの良い名前に変えよう」
その話が中国のメディアで取り上げられると、ネットユーザーからは「佐藤という苗字をもう悪役に使わないでほしい」、などと多くのコメントが寄せられたというエピソードを、顔をほころばせて語ってくれました。
北京冬季五輪から帰国後にウェイボーで公開された娘二人との記念写真
プライベートでは、3人の子どもの父です。その中で、スノーボードの道を行くと決めたのは、12歳になる次女の寧音(ねね)さん。
「寧音には将来、中国語を話せるようになって、日中の懸け橋になってほしい」と佐藤さんは言います。
今後の中国のスノーボードについては、「正しいトレーニング法の確立」と「指導者の育成」が不可欠だと指摘しています。
そのために考えているのが、中国での新プロジェクトです。佐藤コーチが埼玉に作ったスキー・スノーボードジャンプオフトレーニング施設「QUEST」で培ったメソッドを中国に導入し、9~12歳の子どもたちを対象にした選手の育成を計画しています。
「正しい練習の積み重ねで、6年後にはレベルの高い選手が何人か生まれているだろう」と佐藤さんは期待を膨らませています。
夢に向かって頑張る若者へのメッセージを二か国語で、ウェイボーで配信する佐藤コーチ
「スノーボード文化を世界で盛り上げるには、中国と日本の提携が欠かせない。今後もスノーボードを通して、両国の友好に役立てればと願っています。寧音たちが大人になったころには、両国の間にポジティブなニュースが増え、互いにいい印象を持つようになっていてほしい」
こう未来を語る佐藤コーチの言葉は、強く暖かい力に満ちていました。
【リンク】
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