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マスクに思いを寄せて(上)~中国語通訳・神崎多實子さんに聞く

CRIPublished: 2020-04-08 21:35:00
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神崎さんによりますと、張先生は自分よりわずか8歳しか年が離れておらず、「優しいお姉さんのような」先生でした。62年前の武漢で先生からセーターを受け取った時に、「とても喜んでいた」自分は、現地で買ってきたウイグル族のかわいい人形を先生に送ったと記憶をたどります。

神崎さんは、張先生について習っていたのは1951~1953年の2年余りでした。編入されたクラスは、師範学校を卒業したばかりの張先生が受け持った最初のクラスだけあって、先生も教え子たちのことを忘れていません。また、現在も親交を続けている当時の同級生もいます。長春、武漢、昆明と全国各地に分散して住んでいますが、神崎さんが北京に来ると、皆が北京に集まり、同じく北京にいる張先生の自宅を訪ねたりしていました。

2015年、張先生を囲んでの集まりが北京で行なわれました。別れ際に、神崎さんは先生からギュッと抱きしめられ、「私の教え子がみんな、あなたみたいな人だったら良かったな」と声をかけられました。師弟関係60年余の最後の集まりでした。

2016年7月、張先生は89歳で逝去しましたが、ご家族の方たちとは、神崎さんたちは今も付き合いを続けています。北京から届いた500枚のマスクには、実に60年以上の月日の流れがあっても色褪せることのない、親から子へとつないだ深い情が凝集されていました。

2015年夏、長春、昆明、武漢から集まった同級生らと共に北京にいる張先生を尋ね、張先生一家との記念写真

神崎さんの家には、その後も中国各地から3千枚余りのマスクが相次いで届きました。マスクには困っていないはずの神崎さんですが、Wechatで送られてきた顔写真には、なぜか繰り返し洗って使う布マスクがつけられていました。

「付け惜しむ」理由について、神崎さんは言います。

「海を渡ってきたマスク、友情のマスクを一人でも多くの人に実感していただきたい。とりわけ、外での活動が多い若い人たちに一枚でも多く分けたいからです」

こうして、神崎さんに「友好の使節」と称され、「姿なき敵から私たちを守ってくれている」マスクは、春に咲く桜の花びらのように、職場の同僚に、ご自身が指導に立つ通訳養成学校に、孔子学院の中国語教室に、そして、同じ団地のご近所さんに分けられていきました……

今も教鞭をとっているサイマルアカデミーの教え子に分ける際のメッセージ

さて、武漢のその後について。1月23日からの封鎖措置が4月8日に正式に解除されました。市内での予防・抑制対策はまだ続いているため、完全に終息したわけではないにせよ、ウイルスとの戦いでは「段階的な成果」を挙げたことは事実です。インタビューの最後に、「こうした成果を挙げられたのは、神崎多實子さんを始め、武漢以外に住む内外の大勢の方たちからの支援のお陰でもある」と御礼を言いますと、返されてきたのは次のような力強い言葉でした。

「私が中国に何かをしたいということは全て恩返しです。中国で一生懸命勉強するように仕向けてくださった先生と友達がいらしたからこそ、今もまだ中国語を続けたいという気持ちを抱いていられるのです。その人たちへの深い感謝の気持ちの表れだと思っています。私が言うべきことは、これまで本当にありがとうございましたという一言です。これからも自分の余生をそのために尽くしたいと思っています」

そして、「感染が完全に終息した暁には、ぜひまた中国を訪れたい。私の先生のお墓参りもしたいし、友達にも会って、これまでの長い友情を互いに確かめ合って、できるだけ健康で長生きしていきたいと思います」と続けました。

ところで、亡き母の教え子にマスクを送った徐さんは、定年退職した元ファッションデザイナーで、今は野生動物の撮影を趣味にしています。自身の癌体験をきっかけに、北京の病院で終末期ケアのボランティアをし、社会活動にも熱心な人でもあります。徐さんは神崎さんに何故マスクを送ろうと思ったのか、来週の番組でまた改めてご紹介します。

【プロフィール】

<神崎多實子さん>

1935年東京都生まれ。幼年期に家族と共に中国に渡り、1953年に帰国。都立大学付属高校(現桜修館)を卒業した後、北京人民画報社、銀行勤務などを経て、フリーの通訳者に。現在もNHK BSの放送通訳として現役で活躍。

<『越後文学』>

新潟県三条市で編纂、発行されている純文学の同人誌(編集長:梅田純子)。

1940年に創刊され、日本の同人誌として最も長い、80年の歴史を持つ。現在は年4回発行。2019年には新潟出版文化賞を受賞。

「天国からのプレゼントマスク」は神崎さんが5月に発行予定の『越後文学』への特別寄稿。梅田編集長の許可を頂いて、番組で紹介しました。あわせて御礼申し上げます。

【リンク】

マスクに思いを寄せて(下)~徐舒さん:日本に送るマスクは天国の母とのつながり

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