【観察眼】中国の巨大シルバー市場 日本企業にとっても大いなるチャンス
中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)は最近、中国南西部の重慶市内の会社が移動入浴車を使って高齢者に訪問入浴のサービスを提供し、高齢者本人とその家族に歓迎されているという話題を報じた。入浴という多くの人にとっては日常であり気軽で些細なことも、介護を要する高齢者にとっては生活の質にかかわる重大事だ。この報道に接して、多くの人が高齢者の生活の質に関心を持つようになった。
中国民政部の10月の最新発表によれば、中国の65歳以上の人口は2023年末時点で、総人口の15.4%を占める2億1676万人に達した。中国はすでに高齢社会の時代を迎えた。
2021年の第5回中国都市部と農村部の高齢者の生活状況サンプリング調査によると、要介護高齢者は高齢者全体の11.6%を占める約3500万人だった。要介護高齢者は2035年までに4600万に達する見通しであり、要介護高齢者に対する入浴や散髪、調理、清掃、さらに社交や心を支えるためのサービスが必要だ。中国の大中都市ではこのような介護サービスを提供する企業がある。
中国国務院発展研究センターが発表した「中国発展報告2023」によると、現在のところ高齢者介護サービスシステムの構築や高齢者向け環境整備は、急速に高齢化する社会のニーズに依然として追いついていない。同時に、業界専門家はサービスに統一基準がなく、従事者への専門的かつ系統的な訓練が不足しているなどの問題を指摘している。ただし、最も重要な問題は介護者などの専門人材が不足していることだ。
日本も深刻な人口高齢化問題を抱えている。日本の最新統計によると、65歳以上の高齢者は3625万人で、総人口に占める割合は29.3%に達した。しかし、高齢者の介護問題は比較的うまく解決されている。中国では過去20数年来、コミュニティーサービスセンター、研修クラス、職業学校、大学などが高齢者の介護に関する専攻やカリキュラムを設け、日本の介護の方法と経験を多かれ少なかれ学び、多くの専門人材を育成してきた。中国東部の山東省の済南市と営口市、東北部の遼寧省の大連市などの一部の職業学校は日本の高齢者介護施設(会社)と提携して、学生を日本に送って数年間勉強させてから帰国させて各地の高齢者施設で勤務させることで、中国の高齢者介護レベルを高めている。
一部の日本の高齢者介護施設と企業は、日本国内の高齢者介護市場が飽和状態になったことを受け、中国に進出して事業を展開している。例えば日本の医療介護事業大手の元気グループは上海や大連に子会社を設立し、中国企業と合弁で高齢者施設を設立したり、専門家を派遣して中国側の介護従事者を育成したりするなど、さまざまな方法で日本の先進的な介護経験と高齢者施設の運営モデルを中国に導入し、中国各地の高齢者の介護レベルを向上させている。日本の高齢者介護施設や高齢者向け介護用品を開発する会社にとって、拡大しつつある中国のシルバー市場は、自社を成長させる大きな潜在力を秘めている。
また、住宅の介護目的のリフォームも日本企業が中国市場で展開している重要な事業分野だ。人は高齢になれば体力が衰えて反応が遅くなり、手足の動きも鈍くなり、トイレやキッチン、寝室などの居住環境にはバリアフリー改装を施す必要がある。日本はこの分野でも多くの経験を積んできた。