【観察眼】変わりゆく中国の映画市場 努力と革新が進む未来へ
6~8月の夏休みは、中国映画の「黄金シーズン」と言われる。今年の夏休みシーズンは終わりに近づき、中国の映画市場は引き続き活気を見せている。現実主義の題材から、アニメ・漫画作品、冒険ファンタジー、コメディー、犯罪サスペンス、ホラー映画など計142作が上映され、量的にもジャンル的にも実に豊富だ。8月28日時点で、夏休み期間(6月1日~8月31日)の興行収入(前売りを含む)は112億元(約2307億円)に達し、中国コメディー映画『抓娃娃(Successor)』、マレーシアの若手監督が連続殺人事件を描いた社会派サスペンス『黙殺(A Place Called Silence)』、スピンオフ映画『エイリアン:ロムルス』がトップ3にランクインしている。
うち、ハリウッドの『エイリアン:ロムルス』は5億2700万元(約108億5600万円)以上の興行収入を記録し、中国ホラー映画史上のトップを飾った。しかも、同映画の中国での興行収入は北米での興行収入を上回り、フェデ・アルバレス監督は自ら手紙を書いて中国の映画ファンに感謝し、中国での上映バージョンに一つもカットを入れなかったことに喜びを示した。アルバレス監督の祖国であるウルグアイでは、同作品の上映はレーティングにより一部の内容がカットされるとのことだ。しかし一方、この夏にもう1本のハリウッド映画『デッドプール&ウルヴァリン』は中国の映画市場に大きな波を起こさなかった。マーベルのスーパーヒーロー映画として、同作品は中国で公開された最初の20日間で5700万ドルの興行収入を獲得したが、同期間に上映された中国コメディー映画『抓娃娃(Successor)』の興行収入はその6倍だ。
実際には、8月末時点で、今年の中国映画市場の興行収入トップ10のうち、ハリウッド映画は『ゴジラxコング 新たなる帝国』だけが8位にランクインした。その他のハリウッド映画の中国での興行収入は1億~5億元(約20億6000万~110億円)の区間に集中しており、好ましい成績を見せなかった。これについて米CNBCは8月19日、地政学的な要因や中国国内映画市場の発展などにより、ハリウッド映画は中国で魅力を失いつつあり、中国の観客からますます難癖をつけられていると報じた。
確かに、インターネットの普及により、映像資源が豊富になり、ネット上のショートドラマやショートムービーが流行し、人々の視聴習慣や映画鑑賞の好みも次第に変わりながらより多様化し、映画の芸術性やストーリー性、俳優の演技、制作レベルなどについてより「厳しい目」で見るようになっている。このような「厳しい目」は、観客の映画鑑賞と美意識のアップグレードをよく反映しているものだ。内容がより深く、技術がより革新的な作品が望まれる一方、常とう的なストーリーや単純な「ビジュアル効果」が飽きられてしまい、興行収入にも直接反映される。
過去数十年、ハリウッド映画はおそらく最もグローバル化に成功した文化コンテンツの一つと言える。トップクラスのビジュアル体験で世界の映画市場をリードしてきた。しかし今日、いろいろなことを知っている観客はより優れた映画鑑賞の体験を求めている。莫大(ばくだい)な制作資本を後ろ盾に頼っても、目先の利益を求めるだけで、芸術作品としてのシナリオや社会的責任、人間性や社会的現象に対する考えや見地が欠ける作品は、観客の心を捕まえず、競争の激しい中国市場で勝ち抜くことはできない。