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【観察眼】金融包摂への取り組みが中国の農村振興に新たな活力を喚起

CRIPublished: 2024-05-28 10:41:00
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中国は2021年に絶対的貧困の問題を解消したと発表した。その後は貧困脱却の成果を固めながら、農村部をさらに発展させる「農村振興」の段階に移った。最近では、デジタル技術に下支えされた農村部での金融業務の浸透(金融包摂)が農村振興に果たす役割が注目されている。今年に入ってから、広西チワン族自治区桂林市などの農村地区でのフィールド調査を続けている清華大学社会学院政治学科の張小勁教授とその一行は、金融包摂の効能を現場で実感したという。

広西は「天下一の山水」と呼ばれる景勝地の桂林がある自治区として知られる。しかし、その一方で、貧困問題が際立つ地域でもあった。1990年代初めの一時期には、広西の貧困人口は中国全国の10分の1を占め、2022年時点でもGDPは全国の第19位にとどまっていた。

しかし、張教授らを驚かせたのは、現在では僻地の山村に至るまで、銀行が提供するサービスを簡単に利用できるようになっていることだった。地元の桂林銀行は各村に「包摂金融服務点」という名の簡易店舗を設けた。店舗は「站長」と呼ばれる責任者の自宅の一部を改装して利用しており、主な設備は1台当たりの価格が約7000元((約15万円))のタブレットPCの端末だ。「站長」は村の共産党支部の書記、村長、学校の教師、医師といった人望のある人に委託することが多い。ほとんどの利用者は同じ村の住民であり、緊急時には金銭の引き出しなどに24時間体制で対応する。この端末には送金など基本的な銀行サービスメニューのほか、社会保険料や公的積立金の支払い、病院の予約やオンライン受診に至るまで、住民生活を支援する機能が搭載されている。

もう一つの複数の業種の垣根を越えた事業連携も張教授らの目を引いた。

地元出身で30歳のある青年は大学卒業した後、帰郷して起業して8000万元(約17億円)を投資して肉牛牧場を立ち上げた。現在の飼育頭数は4000頭だ。牧場には5G基地局、デジタル情報プラットフォーム、IoT(モノのインターネット)などが完備しているため、従業員はわずか16人だ。牛の牧場につきまとう排せつ物の強烈な匂いというイメージとは裏腹に、ここでは異臭が一切ない。その秘密は、海外から導入したバイオ技術で処理した飼料にある。排泄物の匂いを消すことのできる「善玉菌」が配合されているためという。

飼料はすべて現地調達で、広西の特産品である果実の「羅漢果(ラカンカ)」を加工した後のかすや、トウモロコシ、ワラなどだ。しかも、そのすべてが近くにある飲料水工場や合作社(農業組合)などから無料で提供される。牧場側は見返りとして、飲料水工場の契約農家や合作社の組合員農家に、牛糞で作った有機肥料を無料で提供している。まさにウィンウィンの関係だ。

興味深いことに、こうした提携きっかけを提供したのは、地元の桂林銀行だった。関係者の共通点は、全員がこの銀行の顧客であることだ。

桂林市内にある同行本部ビルには、莫大な資金を投じて整備した大型コンピューティングプラットフォームがあるほか、400人の顧客に同時に対応できるコールセンターもある。こうした最先端のインフラこそが、同行が農村部で業務展開を行う上での力強い技術面の支えだ。中国中央政府は2018年年初、農村振興の全面的な推進に的を絞った公文書を発表した。同行はこの公文書をきっかけに「農村振興」に本腰を入れるようになった。現在では農村地区での業務展開が、他行と差別化を実現する大きな特徴だ。2023年末までに、桂林銀行は桂林を中心に、広西チワン族自治区各地の県・郷・鎮・村を網羅する拠点を設け、農村部の人口だけでも2000万人以上をカバーするようになった。資産総額は4年連続で前年比1000億元増(約2兆2000億円)を実現して計5000億元(約11兆円)を突破し、全国の商業銀行の中でのランキングも第28位に躍り出た。

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