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【観察眼】汚染水の海洋放出 論点をすり替えてはならない

CRIPublished: 2023-09-04 12:39:02
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・ALPSはトリチウム以外の61の核種を本当に除去しているのか。その性能や信ぴょう性、数十年間にわたる安定運転の保証はどうなのか?

・除去された核種はどのように保管され、安全をどのように確保しているのか。

・海水で薄めたとしても、総量が膨大である事実に変わりはない。一旦希釈された放射性物質が海流や食物連鎖を通して、再び蓄積するリスクはないのか。

何よりも注視せねばならないのは、複雑な放射性物質が含まれる汚染水の大規模かつ長期間の海洋投棄であることだ。実態に近い「汚染水」という用語は、人を警戒させるニュアンスがある。安心感を与える「処理水」の語は、問題の深刻さを優しく包みこむオブラートのように思える。

同じ視点からみれば、「ALPS」や「風評被害」も不思議なニュアンスのある用語だ。 タレントのラサール石井氏は連載コラムの「東憤西笑」に、多核種除去設備の英語での頭文字で構成されたALPSという命名に「うまく考えたもの」と嘆き、「ALPS処理水と言えば、『アルプスの天然水』のような浄化された響きがある」と単刀直入に切り込んだ。

また、「風評被害」も効果的な援護射撃の役割を果たしている。あたかも原発事故がすでに終わったのに風評だけが続いており、「風評」に加担する人は非難されるべきだというニュアンスに聞こえる。

ここまで来れば、はっきりと見えることがある。議論の土台はとっくに作られていたことだ。整理すれば、アルプスの天然水を想起するほどきれいな水なのに、意地悪な中国は、アンチ日本のために「汚染水」の語をわざわざ持ち出しているという考え方だ。そのような大前提が整った以上、日本の漁業が被る損失は中国の対抗姿勢が原因であり、だから日中関係の視点からの対応が必要になる――。NHK「日曜討論」をはじめとして、最近の日本メディアの特集は例外なく、日中関係の問題にすり替えて議論を展開している。

しかし、本当にそれで良いのだろうか。人類史上初の、長い期間にわたるおびただしい量の放射性物質の海洋投棄が、地球環境や人間の生存に及ぼす影響という極めて重要な視点は、忘れ去られている。

日本政府と東電にとって、不都合な真実はほかにもある。

NHKによると、汚染水の発生は今も、毎日90トンずつ増え続けている。東電は、廃炉作業に向けて海洋放出は避けて通れないステップとしている。ただし、廃炉の基準は不明瞭だという指摘がある。880トンに及ぶ核燃料をどう取り出すか、まだ明確なロードマップがあるわけではない。とりわけ、メルトダウンした核燃料棒の取り出しは前例のないことで、あと50年かかっても完了は見込めないと指摘する専門家もいる。

130万トン。これはあくまで現在にたまった汚染水の量に過ぎず、放出が終了までに後どのぐらい増え、総量はいくらに達するかは、誰も予想できない。そもそも、放出を終える時期が本当に来るかどうかも予想できない。

海洋放出関連報道に使われる「処理水」「ALPS」「風評被害」などの用語は、結果として日本メディアが日本政府と連携して、これら用語の背後にある議論の前提まであらかじめお膳立てをして、広めて定着させた言葉だ。その広まる過程の中で、複雑で深刻な問題が単純化され、論点がすり替えられ、問題の本質に対する人々の目線を巧みにそらしているのだ。

人類未曾有の出来事に対し、核心に迫る議論を長期にわたって行う努力が必要だ。そのためには、まずは言葉のからくりを見抜く必要がある。科学的な視点から議論すべき問題に、一日も早く科学の目線を導入し、そもそも終わりの見えない放射能汚染水の海洋投棄に、いち早く終止符を打たねばならない。

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