【観察眼】「村サッカー」と「村BA」が中国でバズった理由

そのため、村サッカーや村BAの試合会場では、単にスポーツの競技だけでなく、グルメあり、歌あり、踊りあり、無形文化遺産の実技の披露など、さまざまな楽しみを同時に味わうことができる。

さらに、SNSなどニューメディアの集客効果が地域起こしに巧みに生かされている。

村サッカーを例に取ると、地元で開催されるサッカー試合を真っ先に発信した最初の力は現地の村人たちだった。それを狙って、県の方では短い動画を作り、それを配信できる人材を育成するために、Uターンしてきた若者を対象に研修を行い、ソーシャルメディアで1万2000余りのアカウントの開設をサポートしたという。そのため、村サッカーのフォロワーには村人や一般のネットユーザーもいれば、その他にも多数のインフルエンサー、スポーツ界の有名人などを引き付けている。SNSと主流メディアが連携して、村サッカー関連の話題の閲覧数を300億回余りに押し上げたのである。

SNSで頻繁にトレンド入りし、話題を呼んだことで、地元の観光業にも大きな影響を及ぼしている。榕江県政府の統計によると、5月13日の試合開始以降、榕江県には合計250万6700人の観光客が訪れ、観光総収入は28億3900万元（約580億円）に達した。また、台江県では、村BA決勝戦当日を含む前後3日間で計18万1900人の観光客が訪れ、観光総収入は前年から倍増して5516万元（約11億円）に達した。この一連の地域おこしが功を奏し、地元住民の結束力や誇りが高まり、出稼ぎに行っていた若者も次から次へと故郷に戻っている……いずれも現在進行形で起きている喜ばしい変化である。

小康社会の全面的完成の目標を実現した中国は、現在、二つ目の百年奮闘目標に向かって鋭意突き進んでいる。村サッカーや村BAはまさにこの新たな旅路を歩んでいる人々が、たゆまぬ努力をもって咲かせた美しい花と言える。

今では、村サッカーも村BAももはや貴州省限定のものではなくなり、中国全土へと広まりつつある。国家スポーツ総局が最近発表した新計画では、2035年までに農村部で100種目余りのスポーツ大会の開催をサポートしていくという目標を掲げている。スポーツは中国の今を垣間見る窓口に過ぎず、村サッカーや村BAが見せた活気は、中国式現代化という新たな旅路を歩む中国の活気あふれる姿の縮図でもあるのだ。