【観察眼】放射能汚染水の海洋放出計画足りないのは資金ではなく道義だ
「発光する“すし”に、バスの車両ほどの長さのサーモン……」まるでSF映画のような話だが、近い将来に現実になる可能性がゼロではないと、誰が言えるだろうか。ここ数日、「Oh my sushi!」という動画がSNSで拡散されている。動画に登場するすし職人は、客に「ゴジラ」のような奇妙なすしを売りつけようとする。ネットユーザーからは、「放射能汚染水が海洋放出された未来の暮らしが怖い」という声が相次いでいる。
6月5日は「世界環境デー」、そして6月8日は「世界海洋デー」だ。このような記念日があることからも分かるとおり、海洋環境は国際公共財として全人類から大切に守られるべきである。しかし残念なことに、核の重みを誰よりも知るはずの日本が、多くの反対と疑念を顧みず、福島第一原発の汚染水を海に放出しようとしている。
福島の放射能汚染水が「安全」かどうか、日本を含む各国はとっくに分かっている。もし十分に安全なのであれば、自然資源に乏しい日本が、なぜ国内の農業かんがいや工業生産にこの水を使わないのか。なぜ日本国内の川や湖に放出しないのか。また、日本国民をはじめ、韓国や世界各国の人々が、なぜ相次いで放射能汚染水の海洋放出計画に反対する抗議デモを行っているのか。福島県民や日本の漁業関係者から、なぜ懸念の声が挙がり続けているのか。
常識があれば分かるはずだ。日本政府が太平洋に放出しようとしているのは、福島第一原発の原子炉の中で溶けた核燃料・デブリを冷やすために注がれ続けている水、建屋に流れてくる地下水や雨水が核燃料に触れた「汚染水」である。それに含まれる放射性物質は極めて複雑で、海水を汚染するだけでなく、世界中の生物に影響を及ぼし得る。人類の健康被害と地球環境へのダメージは計り知れない。
また、良識があれば分かるはずだ。このような無責任なやり方は国連海洋法条約(UNCLOS)に甚だしく違反し、グローバルな海洋の生態系に深刻な脅威をもたらす。人類と地球の未来を賭けたこのクレージーな「実験」が一旦スタートすれば、それによる危機は尽きるところがないだろう。
日本政府と東京電力は、海に放出するのが多核種除去設備(ALPS)を使うことで60種類以上の放射性物質を分離させた「処理水」だと繰り返し説明してきたが、東京電力によるデータ粉飾の不祥事が何度も摘発され、ALPSの実際の浄化効果に限界があり、「処理水」に含まれたトリチウムなどの放射能は規制基準を超えていることが明らかになっている。
日本政府は、トリチウムは他の放射性物質と比べて人体への影響が低く、放射線のエネルギーが弱く、皮膚を通ることができないため、外部被ばくによる影響はほとんどないと主張するが、ソウル大学の白道明(ペク・ドミョン)教授(元ソウル大保健大学院長)によると、汚染水に含まれるトリチウムは海草などに取り込まれて有機結合型トリチウムとなり、魚介類に食べられてその体内に濃縮され蓄積する。このような魚介類を食べると、有機結合型トリチウムは人間の体に入り、細胞のがん化を招く恐れは争いのない事実だという。
一方、国際環境NGOグリーンピースの核問題専門家ショーン・バーニー(Shaun Burnie)氏によると、福島原発の汚染水にはトリチウムだけでなく、プルトニウム、ストロンチウム、炭素14などの放射性物質が含まれるとしている。例えば、炭素14の半減期は5700年に及び、2000世代を経ても、福島原発からの炭素14が検出できるという。さらに、海洋生態系だけでなく、大気循環によって海洋に放出される汚染水は蒸気になり、雨水として地球の至る所に降り注ぐことになる。