未来を聞き、愛を伝える

この世に生まれてきた可愛い天使の中には、生まれた瞬間に神様にうっかりサイレントモードにされてしまい、音のない世界とめぐり合ってしまう赤ちゃんがいます。先天性難聴児と呼ばれるもので、中国では現在、世界で最も多い13万7000人がこの病気にかかっています。しかしここ数年、こうした耳の不自由な子供も、補聴器や人工内耳を使って音を聞いたり話しをしたりできるようになり、また綺麗な歌声を出せるようにもなっています。今回は、中国初の難聴児による独唱アルバム「未来を聞き、愛を伝える」をご紹介しましょう。
中国初、難聴児の独唱アルバム
中国では毎年、聴力障害を持って生まれる子供の数はおよそ2万人です。これらの子供たちにとって、6歳までがとても大事な治療時期で、この段階に手術で人工内耳を取り付ければ、音や言葉を身につけることができます。しかし、それにかかる費用は20万元あまり、日本円でおよそ130万円で、手術後のリハビリも高額になるので、多くの家族にとっては大きな負担となります。
アルバム「未来を聞き、愛を伝える」は、中国初の、耳の不自由な子供たちによる独唱アルバムです。このタイトル「未来を聞き、愛を伝える」は、様々な思いが生まれ、心温まるものです。このアルバムの発起人となった、有名なチェロリストの張莹莹さんは、「聴力障害児の家族への支援や関心を高めたい」と話しました。

張莹莹さんは去年、北京の難聴者愛護センターと連携し、全国で5歳から9歳までの子供を何人か選んで、「虫児飛(虫が飛ぶ)」、「可愛的小耳朶(可愛い小さな耳)」など10数曲を収録しました。これらの子供たちは生まれつき耳が聞こえませんでしたが、人工内耳を使い始めてから音の世界を知り、音と言葉を身につけたのです。厳しい訓練を経て、素晴らしい才能を見せ、多くの人々を感動させています。
可愛い小さな耳
上海の女の子、5歳の思諾ちゃんはアルバム「未来を聞き、愛を伝える」に加わった1人で、耳がとても鋭く、初めて聞いた曲でも数回聴けばほぼ口ずさむことができるほどです。「私の耳は音を食べられる」なんて冗談も言います。実は、この「音を食べられる」耳は人工内耳なんです。思諾ちゃんは1歳の時に人工内耳の手術を受けて、音がわかるようになりました。思諾ちゃんの母親は当時のことを振り返って「わくわくして、全部の音に反応したの。鳥の鳴き声とか拍手とか、ピアノとか、聞いたらすぐ嬉しそうに笑っていた」と言いました。
ピアノの先生である思諾チャンの母親は、子供が生まれて6ヵ月後に「先天性聴力障害」であると聞かされます。その時はまさに青天の霹靂で、何もかもおしまいだ、と思いました。お母さんは今でも、当時のこと振り返りたがりませんが、「最初は全然信じたくなかったけど、最後に現実を受け入れ、手術をうけるまではとても辛かった。幸いに手術は成功して、希望が生まれた」と言いました。