名作曲家・王洛賓の恋歌(前編)
しかし王洛賓にとって、妻は初恋の相手として死ぬまで忘れられない存在でした。後に作った「在銀色的月光下(銀色の月光の下で)」、「我等你到天明(夜明けまで待ってる)」など多くのラブソングに出てくるヒロインは、いずれも彼女を想って作ったものです。
チベット族の美しき少女と出会い
妻との関係にひびが入ってしまった1941年の春、王洛賓はチベット族の美しき少女・チョーマと出会いました。この時、映画監督の鄭君里が撮影のため青海省を訪れ、王洛賓を特別出演させたのです。王洛賓は、映画で羊飼いの娘役を演じたチョーマと丸々三日間一緒に過ごします。草原、美しい景色、そして馬で疾走したことは夢のようでした。特にチョーマの鮮やかな黒髪、澄んだ美しい瞳に王洛賓は夢中になりました。
撮影班が帰った日、王洛賓は連日の徹夜でラブソング「在那遥遠的地方(草原情歌)」を書き上げたのです。そして、その歌を聞かせるためにすぐさまチョーマを探しに行ったのですが、チョーマは家族とともに地元の青海湖を離れ、水と草が豊かな美しい牧場へと引っ越してしまっていたのです……
番組の中でお送りした曲
1曲目花児と少年
この歌は王洛賓が寧夏ホイ族の民謡を基にアレンジしたラブソングです。春の美しい景色や、春のような美しい恋を描いたもので。花のような若い女性たちが春の歌を歌いながら、絵のような美しい畑にやってきて、その美しい歌声で少年たちがジーンとくる情景を描いたものです。
春がここにやって来た
レンギョウが咲くレンギョウが咲く
年若い娘は
ピクニックにピクニックに行く
あああなた あああなた
娘の心は波打って波打って
2曲目在银色的月光下
この曲は、王洛賓が別れた妻への想いをつづったものです
あの金色の砂浜に
銀の月影がこぼれる
あの日の姿を探せど
面影遠く夢ぼろしか
私を捨てた娘よ
今はどこに
3曲目在那遥遠的地方
この歌は1941年に作られて以来、中国各地に広がり、多くの人々に愛されています。
歌詞:
あの草原の彼方に
いい娘がいる
そのテントを過ぎる人は
だれでも振り返る
バラ色の笑顔
まるで太陽のよう
キラキラしたひとみは
さやかな月のよう
何もかも捨てて
一緒に羊を飼いに行く