「敕勒歌」の世界へようこそ
北方草原では今、敕勒族はすでに消えてしまいましたが、「敕勒の歌」は代々伝えられており、英雄の倍候利と斛律金の物語も脈々と語り継がれています。
多元文化の地~敕勒川~
中国の地図を広げると、内蒙古自治区から河北省にかけて山が連なっているのがわかります。これは陰山山脈で、長さおよそ1200キロ、そしてこの山脈がまるで巨大な腕のように、敕勒川に横たわっています。シベリアからの寒波を遮り、南は黄河に接しています。その黄河の水資源に恵まれた敕勒川は、昔から中国の多元文明の源の一つとされています。
「中原」と呼ばれる、山西省や陝西省、河北省などでは、明の時代から多くの人が、自然災害に見舞われ、あるいは商売をするために故郷を離れ、蒙古草原の敕勒川に移り住みました。これは歴史的に有名な民族大移動で、「走西口(西への移動)」と言われます。そんな「西への移動」は、中国北方の繁栄や発展を進めて、新たな文化を育みました。その一つが、こうした背景で生まれた民謡の「走西口(西への移動)」です。山西省太原のある若い女性が結婚した後、地元が災害に見舞われ、夫はやむなく妻のもとを離れて豊かな蒙古草原へ出稼ぎに行く、といった内容です。夫や恋人と別れる時に、優しく送り出すも断腸の思いに駆られる女性の悲しみを唄ったもので、数百年が経った今でも歌い継がれています。
番組の中でお送りした曲
1曲目敕勒歌
この曲は蒙古族の名歌手・テンゲルが歌ったものです。
空がテントのように原野を覆う
空は青く野は果てしなく
草がたなびき牛やヒツジが見える
2曲目出塞曲
この歌は蒙古族の詩人・席慕容が書いた詩の「出塞曲」を元にアレンジした曲で、見渡す限りの大草原で、故郷を思う気持ちが歌われています。
出塞の歌を歌って下さい
忘れられた古い言葉で
美しいビブラードで呼びかけて。
我が麗しい故郷よ
万里の長城の外だからこその風景
3曲目走西口
歌詞:
あなたは西へ行く私は引き止められない
手を掴んで表まで見送りに行く
村を出たら
言いたいことがある
大通りを歩いてね
人が多いと寂しくないから