日本人スタッフのつぶやき330~第十三期五カ年計画へのまなざし①
一方、一人っ子政策の残した問題も多い。一つ種を失った老夫婦の晩年の生活をどうささえるのかという問題はもちろんのこと、不妊症に苦しむ夫婦、生みたくても政策で生めず、政策が変わった時点ですでに生育能力がなくなっている夫婦。物価が高くなる世の中でも安心して生める、安心して育てられる、別の条件で育てられない人は里子に出せ、生めない人は里子を貰い受ける、そうした「やさしい社会」がこれからは求められていくのではなかろうか。また、いっその事、計画出産そのものをやめてはどうなのだろうか。そして、こうして傷ついた人々へのケアの視点が、これからの立法には求められてくるであろうし、現指導部の今後を見据えた政策実行力にも求められてくる。これは1年に200億元と言われる計画生育委員会の「罰金」のバリューチェーン6)を断ち切ることにもなるので、既得権益者からの反発は避けられないであろうが、そこは反腐敗を含めて現政権に英断を期待したいところである。それは懐妊という人間の生理的仕組みと、子供を産む喜びを再び国民に返す試みであり、ある程度国民の「生活充実度」を向上することになるはずである。
また、出生率低下と人口高齢化への対処としては、遅きに失した部分はあるが、ここ数日の株価の動きを見ると、関連株が活発な動きを見せ始めており、一定の経済効果は期待できるのではないかと考える。もちろん、これは最低でも2016年の立法後、17年からのことになる。
ほかにも、これらへの対策として、
①出産と育児を支える社会保障環境の充実
②上記に伴う社会保障基金の拡充
③不妊症夫婦対象の補償つき里親制度の立法化
不足している施策としては、
④人口減に対応するための、これまでとは逆に出産を促し、その生活を支える社会環境を整備する施策のデザイン
⑤人口学的知見を広く取り入れた人口対策
など、国民に寄り添ったアクションが求められていくはずである。こうした施策が、現指導部の国民との対話の成果として現実化することを望むばかりである
なお、本項は2016年の全人代で立法化されるが、2人目も依然として「出産許可証」が求められるものであり、自由に生んでよいわけではない。この点に関して、現地市民はあまり論議していないのが不思議なところであるが、これは将来的には完全撤廃を目指すべきだと考える。現状の経済環境で、出産の「市場化」もまた社会の求めるものになってくるはずだからだ。