【北京冬季五輪注目の選手②】ショートトラック・武大靖
第24回オリンピック冬季競技大会は2022年2月4日から20日まで、第13回パラリンピック冬季競技大会は3月4日から13日までの日程で、北京市、延慶区と河北省張家口市の3つのエリアを舞台にそれぞれ開催されます。このコーナーでは、冬季オリンピックとパラリンピックの注目の中国人選手をご紹介します。
3度目の冬季五輪に挑む、謙虚なチャンピオン
資料写真
武大靖
1994年黒竜江省ジャムス市に生まれる
2006年江蘇省でプロ選手になる
2009年国家代表選手の練習アシスタントとして代表チーム入り
2012年国家代表選手になる
2013年W杯韓国大会の1000mで優勝
2014年ソチ冬季五輪で初の五輪出場、男子500mで銀
2014年世界選手権500mで優勝
2015年世界選手権500mで優勝し2連覇を達成
2018年平昌冬季五輪500mのグループ予選で五輪記録破る。準々決勝と決勝で2度世界記録を更新し優勝
2018年W杯で世界記録を再び破って優勝
出場種目:スピードスケート・ショートトラック男子500m、5000mリレーなど
ハードな練習も恐れず、10歳でスピードスケートの世界へ
武大靖さんは1994年に中国東北地域の黒竜江省ジャムス市で生まれました。10歳のとき、テレビで中継されたスピードスケート・ショートトラックの試合を見て、当時の中国代表選手の颯爽とした姿に感化されて、自分でもやってみたいと思い立ちました。その練習のハードさを見て、父親が「やめよう」と言っても、武さんは続けたいと返事したそうです。そうして、まずは地元のアマチュアチームに入りました。
過酷な環境を和らげてくれた、保護者たちの温もり
毎朝4時前に起床。母親が彼を自転車に乗せて練習場に送ります。のちに母親は「当時、息子は目覚まし時計をかけなくても、ちゃんと4時前に起きていた。相当スケートが好きだったのだろう」と振り返っています。
練習までの難関は早起きだけではありません。東北の冬の厳しい寒さも立ちはだかります。黒竜江省は東北地域の中でも北の方です。冬の最低気温は、氷点下30度にも下がります。
武さんが10歳の頃の練習場は屋外のスケートリンク。練習中の気温は氷点下10度を下回ります。子どもたちは10分も練習すれば足の感覚がなくなってしまいます。それを見た保護者たちは、スケートリンクの近くに小屋を建てました。中で火を焚いて、子どもたちが暖を取れるようにしたのです。子どもたちは10分ほど滑ったら小屋で足を暖め、またスケートリンクに戻って練習を続けます。そんな毎日でした。
屋外なので、雪が降った日にはチームの責任者と保護者たちが一緒になって雪かきをして、子どもたちが滑れるようにしていました。
12歳でプロの道へ
屋外のスケートリンクで練習を始めて2年ほど経ったある時、プロ選手になる機会が訪れました。武大靖さんが12歳のときのことです。中国東部、江蘇省のプロチームがジャムス市に選手を募集に来たのです。江蘇省ならば、室内のスケートリンクなどの練習環境が整っています。しかし、12歳の少年にとっては大きすぎる決断です。両親が彼に、「江蘇省に行ったら1年間は家に帰れない。それに、日常生活のすべてを自分でやらなければならない。本当に大丈夫なのか」と確かめるのも当然です。しかし武さんは迷わず、「大丈夫だよ。行きたい」と答えました。そして彼は1人で寝台列車に乗って、故郷から2000キロ以上離れた江蘇省に行ったのです。