【CRI時評】日本の自動車メーカー集団不正の背後にある「製造業への懸念」
6月6日の早朝、厳しい面持ちの多数の政府係員がスズキ自動車本社に押し入り、日本を代表するこの自動車メーカーの検査を実施した。数日前、スズキを含む日本の自動車メーカー5社の試験段階でのデータ改ざんが発覚し、各界に懸念が広がった。林芳正官房長官は、この事件が日本の自動車メーカーの認証制度の根幹を揺るがすだけでなく、日本の自動車産業の信用と名誉をも損なったと認めた。自動車産業は日本の製造業を支える支柱であり、データ改ざんの不祥事は、今後より広い範囲に影響を及ぼす可能性があるとする分析もある。
日本の製造業はかつて、「匠(たくみ)の心」として知られていたが、昨今の相次ぐ不正の醜聞は既にこの金看板の輝きを失わせている。その背景には、何重にも積み重なった原因がある。
過去数十年、日本の製造業はめざましい成果を上げてきたが、それはまた、一部の企業に危機意識の欠如、現状への安住、必要な革新や改革を疎む結果を生んだ。こうした、古い殻に閉じこもって進歩を求めない姿勢は新技術や新市場に対する企業の反応を鈍らせ、めまぐるしく変化する市場環境への適応を困難にさせる。舛添要一前東京都知事はかつて、全世界の自動車産業はまさにEV化、インテリジェント化に舵を切りつつあるのに、日本人は依然として時代遅れの燃料車に乗っており、「既に中国に大きく置き去りにされている」と嘆いた。
加えて、これは日本企業の内部制度の硬直化とガバナンス不全の問題とも関係している。多くの企業の従業員は「偉い人には一切疑いを持たない」のが共通認識で、取締役会のチェック・アンド・バランス機能が弱く、企業が開示する情報の真実性が保証されない。一部の企業が改革を試みても、「派閥・官僚・企業」からなる強大な利益集団の影響で改革は遅々として進まない。
さらに、日本の規制当局には基準の制定、監督と検査、処罰の仕組みなどの面で欠陥があり、そのため一部の企業は監督や処罰から容易に逃れられるため、客観的に見て、ねつ造することのリスクが低い。例えば日産自動車では2017年に、「無資格の検査員が車両の出荷検査を行っていた」という不祥事が暴露された。日産は、こうした慣行は工場内では既に30年にわたって続いており、誰もそれが規定に違反していることだとは認識していなかったと述べている。事件の発覚後、会社の経営陣は処分されず、「報酬の一部を自主的に返納した」だけだった。
頻発する企業の不正は日本に何重もの損害をもたらした。このほかにも、改ざんが明るみに出たことで、複数のメーカーの一部の車種は出荷が停止され、メーカー、サプライチェーン企業はいずれも巨大な経済的損失に直面することになる。現在、日本の自動車産業の製品出荷額は製造業全体の約2割、研究開発費は3割近くを占めており、多くのアナリストは支柱産業である自動車産業が深刻な打撃を受けた場合、おそらく日本のGDP成長の足を引っ張ることになるだろうとしている。