南西部少数民族の恋歌(中編)
北京は師走の慌ただしい時期を迎えています。中国南西部の雲南省、貴州省、広西チワン族自治区には、多くの少数民族が暮らし、音楽も多彩で民族音楽の宝庫と呼ばれています。今回の中国メロディーも引き続き、これらの少数民族の、恋愛や結婚に関する風習と恋歌をご紹介します。
イー族
中国西南部の雲南省、四川省、貴州省の山間部に暮らすイー族は、7000年という悠久な歴史を持っています。イー族は歌と踊りが上手で、お祭りの日も結婚や家の新築といっためでたい日も、山の歌と民族舞踊で興を添えています。夜通しで歌ったり踊ったりして祝い、若い男女が相手選びをする絶好のチャンスともなっています。
明月が空にかかる夜、若者たちの奏でるロショウや月琴、竹笛の優しい音色が、そよ風に乗って流れます。それは若者が女性を呼びかけ、思いを表すものです。娘たちがその音色にそって広場にやってきて、一緒に火を囲んで歌ったり踊ったりして、楽しい歌声と踊りで男女の仲が近づいていきます。
イー族の村では、多くの若い男女が「跳歌場」、つまり歌ったり踊ったりする場所で出会い、愛し合い、縁を結ぶのです。若い男女がこの場で知り合い、礼儀正しいか、人柄が良いか、才能があるかなどを詳しく見るのです。
そして若者は、この「跳歌場」で好きな女性と出会うと、静かなところまで連れていき、告白します。相手の女性は、意中の人であれば、ひそやかに男性の手を噛みます。これはOKの合図です。もし軽く触る程度であれば、NOの合図です。ですから男性は、女性にしっかりと噛まれればとても喜び、腕輪や指輪など、愛のしるしを相手に送り、いつまでも別れない気持ちを表します。
プイ族
中国南西部の雲南省や貴州省には多くの少数民族が暮らし、これらの民族には独特の恋愛の習俗があります。例えばイー族はロショウや竹笛で恋の気持ちを伝え、プイ族の若者は口笛と木の葉を吹いて、女性を引き付けるのです。
プイ族の若者はだいたい16、17歳の時に口笛や木の葉の吹き方を身につけ、女性を引きつけ始めます。気に入った女性と出会ったら、これで相手を引きとめ、また、恋歌で相手の気持ちを探ります。そして女性は、意中の人であれば歌で答えます。逆に、女性が笑いながら道を急げば、もう歌わなくていい、ということになります。もちろん、男性が名残惜しくて女性を何回も引き止め、ようやく相手を感動させ、歌の掛け合いすることもあります。
番組の中にお送りした曲
1曲目不要怕
この歌はイー族の民謡です。
風が立ち
雨が降る
葉が落ちる
葉が色づく
春が去り
秋が来る
時はうつろう
2曲目相爱的人为何不能在一起
この歌はイー族のラブソングです。
なぜ愛し合うのに寄り添えない
君のことを思うたびに
君がどこにいるかわからない
心に愛とせつなさが溢れ
永遠の傷口になるのか
3曲目好花紅
この歌はプイ族でも有名なラブソングです。深い意味が込められた歌詞と、感動な美しいメロディーはとても魅力的です。
歌詞:
山の中の花は誰のために咲く
あなたは誰のために山を越えて来たの
かなたに緑の海
そして赤い花が咲いている
山の中に咲く花よ
ひそやかにあの人を待っている