ピンポン外交から50年、名古屋で記念シンポジウム
中米の和解と中日国交正常化などのきっかけとなった「ピンポン外交」から50周年となる今年、その歴史的意義を振り返り、歴史から学べるものについて語り合うシンポジウムが26日に、「ピンポン外交」ゆかりの地、名古屋市内で開かれました。
「温故知新ピンポン外交が導く未来―ピンポン外交50周年記念シンポジウム」と題したこの行事は中国駐名古屋総領事館、愛知県日中友好協会、愛知県卓球協会、新建文化スポーツクラブにより共同開催され、リモート参加も含め、約300人の出席を引き付けました。
中国駐日本大使館の孔鉉佑大使はリモートで行った基調講演の中で、「小さなピンポン玉で大きな地球を回す」という「ピンポン外交」の壮挙を振り返り、今日の世界情勢にもたらす示唆として、「相互尊重、小異を残して大同につくという付き合い方を堅持すること」「民間先行、民を以て官を促すという中日友好の伝統を守ること」「時流を見極め、大局を図る戦略的ビジョンを堅持すること」という3点を挙げていました。孔大使はまた、「政治体制やイデオロギー、歴史・文化の違いが国と国との交流の障害にはならず、ましてや対立や対抗する理由になることはないと実証された」とピンポン外交の意義を強調しました。
会場の様子
中国人民対外友好協会の林松添会長はビデオメッセージの中で、「世界は未曽有の変革の中ではあるが、平和と発展は依然として今の時代のテーマだ」と話しました。また、来年の国交正常化50周年を新たな出発点とし、「ピンポン外交の精神と民間友好の伝統を受け継いで発揚し、中日関係の安定かつ長期的な発展やアジアの平和と繁栄に新たな貢献を果たすよう期待する」と述べました。
挨拶中の後藤泰之会長
今年から愛知県日中友好協会会長にも就任した愛知県卓球協会の後藤泰之会長は、元日本卓球協会会長で、「ピンポン外交」の立役者である後藤鉀二氏の孫です。後藤会長は席上、祖父と父が中国の関係者と深く交わってきた足跡を振り返り、「祖父や父の時代を経て、日中友好の未来を作るバトンを託された」と自身の思いを語りました。
また、会場で挨拶に立った名古屋市の広沢一郎副市長は、「ピンポン外交の歴史的意義を今一度思い起こし、日本と中国のさらなる交流の発展につながることを心から願う」と話しました。
シンポジウムでは、日中友好協会の岡崎温理事長が進行役を務め、参議院議員で日中友好議員連盟の近藤昭一幹事長、後藤鉀会長の秘書だった小田悠祐さん、第31回世界選手権大会の女子団体で金メダルを獲得した元日本代表選手の竹内敏子さんと杉本安子さんなどの生き証人が当時の実体験を語りました。また、東洋学園大学の朱建栄教授、愛知大学国際中国学研究センターの李春利所長は学者の視点から講演を行いました。名古屋の大学で勉学中の日本人学生や中国人留学生の代表もそれぞれ発言し、若い世代の意気込みを聞かせてくれました。
25日に愛知県体育館で開かれた卓球大会の始球式で、福原愛元日本代表
26日、ピンポン外交50周年記念写真展を見学する劉暁軍中国駐名古屋総領事と大村秀章愛知県知事
なお、シンポジウムの開催に先立ち、25日には第31回世界選手権大会の会場だった愛知県体育館で卓球の交流試合が無観客で行われました。市民団体30余りが出場し、福原愛元日本代表も応援に駆け付け、劉暁軍総領事との間で「始球式」が行われました。このほか、記念ソングやロゴの作成など一連の行事も展開されました。
(取材&記事:王小燕、小林千恵
写真提供:中国駐名古屋総領事館)