【観察眼】150000000000件!偉業達成の中国宅配業 さらなる可能性
11月17日、中国国家郵政局のスクリーンに映し出される長い数字。スクロールを続けるこの数字は、午後4時29分に点滅し、「150000000000」で固定された。
1500億!これは、中国で今年取り扱われた宅配便の件数だ。中国の宅配便の年間業務量は初めて1500億件の大台を突破した。
この「1500億件」実現の背景には何があるのだろうか。
一つ目の要素は、「市場の発展と繁栄」である。1500億件の宅配便と聞いてもピンとこないかもしれない。これは、中国の1人当たりの年間宅配便受取件数が100件を超え、1秒間に平均5400件以上の宅配便が届いているということになる。この背景には、中国経済の持続的な成長、巨大な市場、電子商取引などの新型消費モデルの発展といった要素がある。今年に入ってから、中国の宅配業界の発展の質と効率は絶えず向上し、1日の最高取扱量は7億2900万件を超え、月平均業務量は130億件を超え、月平均業務収入は1000億元(約2兆1400億円)を超えた。世界経済が多くの不確実性と試練に直面する中で、中国経済の安定した発展と内需の拡大により、中国の宅配業は依然として力強い成長の勢いを維持しているのだ。
二つ目の要素は、「よりバランスのとれた地域の発展構造」である。今年に入ってから、中国中部と西部の宅配便取扱量の割合は上昇を続け、伸び率は全国の平均水準を上回った。チベット・ニンティ市のヤク肉、新疆・コルラ市の梨、寧夏・賀蘭山のワイン、青海・ゴルムド市の玉器など、中西部の特産品が、宅配便の効率化によって全国に届くようになった。
消費市場の熱は、農村の宅配業からも感じ取れる。中国は2024年10月までに累計33万7800カ所の村の郵送物流総合サービスステーションを建設した。「すべての県にディストリビューションセンターがあり、すべての町に配達ステーションがある状態」という目標が基本的に実現した。中国国家統計局が発表したデータによると、今年の第1~3四半期、農村部の消費財小売額は前年同期比4.4%増の4万7695億元(約102兆800億円)となった。農村住民の一人当たりの消費支出は前年同期比6.5%増加し、成長率は都市部を1.5ポイント上回った。農村宅配業の迅速な発展による恩恵だ。
「1500億件」実現の背景にある三つ目の要素は、「ハイテクによる後押し」だ。
中国トップのフードデリバリーサービス企業「美団」は今年8月、八達嶺長城でドローン配達サービスを展開した。観光客が二次元コードをスキャンして注文すると、最速で5分以内に商品を受け取ることができる。配送料はわずか4元(約85円)。アリババの物流関連企業「菜鳥網絡」が運営する無人配送車は、全国20余りの省の大学の道路で500万キロ以上の走行距離を達成したほか、今年の大型セールイベント「ダブルイレブン」期間中に、浙江省余杭市の宅配拠点からの1台当たり1日平均約2000件の小包の配送を支援した。また、EC大手「京東(JD.com)」が運営する物流会社「京東物流」のスマート倉庫センターは、5G技術を搭載したスマートピッキング・運搬ロボットを使用することで、ピッキング効率を大幅に向上させた。
年間業務量1500億件という大台を突破した中国の宅配業は今後、デジタル化とスマート化の発展や「一帯一路」イニシアチブなどをめぐる国際協力の進展に伴って、世界でより活躍し、世界をつないでウィンウィンを促進する重要な要素となっていくだろう。その中で大きな可能性を秘めているのが、日本との物流協力だ。クリーンエネルギー輸送とクロスボーダー輸送に取り組んできた日本の日郵物流は、すでに中国湖北省鄂州市に合弁会社を設立し、グリーン物流を通じて中国の持続可能な発展を支えている。また、多くの日本製品が、中国と欧州を結ぶ定期貨物列車「中欧班列」によって欧州へ輸送され、時間とコストの大幅な削減が実現している。
先日行われたAPEC非公式首脳会議期間中の中日首脳会談では、習近平国家主席が「中日両国の経済利益と産業チェーン・サプライチェーンは深く融合している」と述べたのに対し、石破茂首相は、「日中経済協力の潜在力は大きい」と応じた。1500億件の宅配便件数というのは一里塚であり、ゴールではない。より広大な前途がある中国の宅配業について、中日両国が協力の新たなチャンスを模索できることを期待したい。