【観察眼】北京香山フォーラム 平和に向けた集い
北京には、国内屈指の紅葉の名所として知られる香山(こうざん)という山がある。中国が主催し、世界の注目を集める国際安全・防衛対話「北京香山フォーラム」の名称は、2006年の第1回がこの山の麓で行われたことに由来している。
同フォーラムは後に会場を北京国際会議センターに移したが、紅葉の秋に(通常は1、2年に一度)開催されることが定着した。
今年は、今日(12日)から14日まで、第11回が開催される。100以上の国・地域・国際組織の防衛当局者および専門家・学者が参加し、参加者数とレベルはいずれも過去最高となった。テーマは「平和を共に築き、未来を共有する」である。
注目すべきは、今回の参加者に、米国、ロシア、ウクライナ、イスラエル、NATO、EUが含まれていることだ。世界各地の不安定な情勢を背景に、これらの代表が一堂に会する。各側が、安全保障の面でコミュニケーションを取る意欲を見せていることが分かる。同フォーラムは、各側が相互理解を深め、正しい判断をし、協力を求める機会となっている。
特に、衝突が続いているロシアとウクライナが、それぞれの専門家や学者を同じ会場に派遣することは非常に珍しい。最近、ロシアのプーチン大統領やイタリアのメローニ首相が、中国にロシア・ウクライナ衝突の調停役を担ってほしいと発言したことを考えると、今回のフォーラムで何らかの進展があるのではないかと期待したい。ロシアとウクライナが派遣したのは専門家や学者だけで、公式の接触ではないが、この非公式な接触が、将来的な双方の意思疎通のきっかけになるかもしれない。
主催者側の発表によると、米国からは国防総省の代表団がやってくる。これにより、今回のフォーラムに戦略的な意味合いが添えられたという見方ができる。今年に入ってから、中米両軍の交流は明らかに増えている。国防当局間の作業部会や中米海上軍事安全協議メカニズムに基づく作業グループ会議の開催に続き、先月末にはサリバン米大統領補佐官が就任後初の訪中を実現した。そして今月10日には、中国軍の南部戦区司令官と米インド太平洋軍司令官がビデオ通話を行った。そんな中、今回の米国防総省のフォーラム参加は、中米双方がさらなる対話と協力を求める前向きなシグナルを発信した。
また、北京香山フォーラムは、国際舞台での発言権が少ない発展途上国が声を上げられる場でもある。これは、米国など西側が主導する国際フォーラムとの大きな違いと言える。例えば今回は、「『グローバル・サウス(新興国と途上国)』と世界の平和と発展」という議題が設けられ、成長を続ける発展途上国および中小国が、先進国や地域の大国と平等に対話し、協力を模索する機会となる。
さらに、日本にとっても重要なフォーラムとなっている。過去には、海上安全、領土問題、地域安全などに関する日本側代表の発言が話題になった。そのため、今回は中日の間でどのような意見交換が行われるかが焦点となっている。
今年の紅葉はまだ見ごろを迎えていないが、北京香山フォーラムはすでに成熟した会議の場となっている。今回のフォーラム参加者数とレベルが過去最高となったことの背後には「平和」への願いがある。大会のテーマをめぐり、各側が平和な未来をどう目指していくのか、注目したい。