【観察眼】歴史や文化に魅了される中国の若者が増加 そのライフスタイルと背景とは
今の中国の若者は、歴史や文化にかなり興味を持っているようだ。
ここ数年で中国に来たことがある方なら、各地の観光スポットや繁華街で、中国の伝統衣装である「漢服」を身にまとった若者を何度も目にしたことがあるだろう。彼らは古代の人のようなポーズで、写真映えする自然や古代建築の前で記念写真を撮ったり、漢服姿で楽しそうに街歩きをしたりしている。彼らの多くは自分が着ている漢服が中国のどの王朝のものであり、そのデザインにはどんなこだわりがあるかをきちんと知っている。彼らに漢服を着る理由を聞いてみると、「漢服は中国の伝統衣装であり、中国人の美意識に合っているから」「漢服に触れることで、そこに込められた歴史や伝統技術を知ることができて楽しい」「漢服を着ることが若者の間で流行っているから」といった答えが返ってくる。
ここ数年で中国の博物館に行ったことがある方なら、見学者に若者が多いことに気づくだろう。彼らの多くは見学前にいろいろと予習をして、その博物館の注目すべき展示品をチェックする。見学時には、目玉となる展示品やその他の興味深い展示物の写真を撮り、SNSにシェアする。帰る前には、自分のスタンプ帳に博物館の記念スタンプを押し、オフィシャルグッズショップに行くことも絶対に忘れない。博物館の代表的な展示品をモチーフにしたオリジナル商品は大人気で、開けるまで中身がわからない「ブラインドボックス」やオリジナルデザインのアイスクリームはいつも「絶対購入リスト」に入っている。さらに、家に帰ってからも、博物館の公式サイトや、AR・VRといった新技術を使った「デジタル博物館」「クラウド上の博物館」などで、現場でゆっくり見られなかった展示品をもう一度見学し、知識を深めるような若者も少なくない。
中国の若者に近年のおすすめ番組を聞くと、『舌尖上的中国(舌で味わう中国)』『航拍中国(空から見る中国)』『我在故宮修文物(故宮で文物を修復する私)』『如果国宝会説話(国宝が話せるなら)』といった名前が出てくるだろう。これらはすべて、中国の文化や自然遺産を紹介するドキュメンタリーだ。映像が特に美しい番組、ナレーションがわかりやすくユーモアに富んだ番組、珍しく感動的なストーリーの番組、そしてこれらの魅力をすべて兼ね備えた番組もある。こういった番組は、従来であればバラエティ番組やTikTok、ポップスにしか興味を持たないような年代の人々たちをも引き付け、これまで見たことのない各地の美しい風景、知らなかった歴史や文化の魅力を伝えている。番組で文化財の研究や保護に一生を捧げた方たちのことを知り、彼らを心から尊敬し、文化財関連の仕事を志す若者も増えているという。
歴史や伝統文化に親しむというライフスタイルは、すでに中国の若者の間に定着している。その背景には、政府から民間まで、学校から博物館まで、そしてメディアを含む社会全体の取り組みがある。その目的は、文化や自然遺産を保護しながら、それぞれが担う歴史的、文化的、芸術的、思想的価値を広く伝え、古い遺産に新しい命を吹き込み、一般市民の生活に取り込むことにあり、それはまさに、中国が「文化・自然遺産の日」を設立した目的でもあった。
中国の「文化・自然遺産の日」は毎年6月の第2土曜日だ。今年は6月8日がその日にあたる。今年の「文化・自然遺産の日」は、中国で初めて世界無形文化遺産に登録された祝日「端午節」の連休と重なった。中国の4つの重要な伝統的祝日の一つである端午節には、ちまきを食べたり、ヨモギを門に飾ったり、ドラゴンボートレースをする風習がある。中国には長い歴史やさまざまな文化がある。興味を持たれた方には、ぜひ体験していただきたい。