【観察眼】中国車の海外販売を手がける日本商社の案件にみる第三国市場協力のポテンシャル
一方、世界の自由貿易に目を向けると、情勢は依然として楽観できないままである。この12月に発表された、米政府による電気自動車(EV)購入に関する税優遇措置に関する新規則では、2024年から「注目される外国機関(FEOC)」が製造または組み立てたバッテリーモジュールを、減免条件を満たす新エネルギー車に含まないことが言及されており、これは中国を標的にしているとみられている。
だが、同じく12月の動きとして、日本の電子部品メーカー「村田製作所」の中島規巨社長はロイター通信とのインタビューで、世界のスマートフォン市場の伸びは中国企業の海外販売台数にかかっていると指摘している。同社はスマートフォンに必要な、電流を安定させる積層セラミックコンデンサー(MLCC)などのシェアを拡大したい考えだが、目標が順調に実現するかどうかは、「中国の携帯電話メーカーのインドやアフリカ向け販売が予定通りに進むかどうかにかかっている」として、「中国の携帯電話メーカーの海外進出に追随して、近くに工場を建設し、世界でのシェアを拡大していく」とまで語った。
先日、サンフランシスコで行われた中日首脳会談で、双方の首脳は戦略的互恵関係を包括的に推進することを再確認し、岸田首相は、日本は中国との経済的な「切り離し」を望んでいないとの姿勢を表明している。
首脳会談の内容をこれからどう実行に移していくか。このことを考える上で、同じく双日総研の泉隆博シニアアナリストの「中日ハイレベルシンクタンク学者対話」での言葉が心に響く。
「今後、日中双方が戦略的互恵関係の意識を持ちつつ、警戒しすぎることなく、協力を通して共通の利益を捉えることができればベストではないかと思います」
間もなく新しい年が幕を開ける。中国と日本は腰を据えて、協力ウィンウィンの年を迎えられるよう力を合わせようではないか。