【観察眼】今の中国の若者 食品の余り物が好きなのはなぜ
最近、中国の若者の間で食品の「余り物ブラインドボックス」といわれるものが人気を博している。賞味期限が近かったり、当日の閉店間際になっても売れ残っている食品を紙袋や不透明なビニール袋などで「ブラインドボックス」という形で包装した後、中国のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」上のミニプログラムまたは専用アプリで割引販売するものだ。中に何が入っているかは、その店の当日の売れ行きによる。
元々の販売価格が20元余りのベーカリーセット(タルト4個、肉そぼろケーキ2個を含む)が11.9元(約230円)で、30元のお寿司が12.9元(約250円)で、40元の大小2個のパンが12元(約240円)で手に入る。その値段のお得さ故に、多くの若者が、時間と数量限定で販売される「余り物ブラインドボックス」を求めて、発売開始時間のかなり前から待機している。関連企業の一つ、「米粒盒子」の統計によると、今年に入ってから同プラットフォームの登録業者数とユーザー数が大幅に増え、既に600以上のブランドが登録しており、新規登録のユーザー数は1日当たり2000人以上のペースで増加して、累計20万人を超えている。
この新しいビジネスモデルは、中国のSNS上で話題になっている。ネットユーザーからは、「スタイルが新鮮で面白く、節約にもなる。みんなのためにもなることなので、誰でも注文してみたくなるだろう」「この『ブラインドボックス』は食品のロスを減らし、節約につながる。中国で提唱される『光盤行動(お皿をきれいにする。つまり、なるべく食べ残しをしない、食べ残したものを持ち帰る)』にも通じて、良いことなので、大いに提唱すべきだ」「ミニプログラムやアプリ、それにパッケージには『食糧一粒一粒を大切に』などの文字が書かれていることが多く、慈善活動をしているような誇らしさを感じる」などのコメントが寄せられている。
ネットユーザーらが言うように、「余り物ブラインドボックス」が中国で爆発的な人気を博している背景には、中国が近年推進している食品浪費反対への取り組みと、国民一人ひとりに浸透している理性的かつ環境に配慮した飲食消費理念がある。今、中国各地のレストランの店内では「光盤行動」を呼びかけるポスターやスローガンがよく見られる。「一人用」「二人用」「三人用」さらには「子ども用」などと、異なる分量のメニューを用意する店も増えている。また、各店舗では食べ残しを持ち帰るための箱を提供している。オンライン店舗も注文画面に料理の量やサイズを表示して、何人分か提案するなど、過剰な注文を避ける取り組みをしている。
このほか、一部の飲食店では「フードステーション」「フードバンク」を設置し、まだ賞味期限まで間がある売れ残った食品を、それらを必要とする住民に無料で配っている。これらは、政府や公益組織が中心となって実施する場合もあれば、飲食店が自発的に行う場合もあり、いずれも食品ロスを根源からなくすことが目的だ。
同時に、中国は食品ロス回避を法的な面からも保障している。中国は2021年に食品ロスに対する初の専門的な法律「反食品浪費法」を公布し、国民と社会全体に向けた飲食消費と日常的な食品消費の基本的な行動規範を確立した。
食品ロスに反対することは既に中国社会の共通認識となり、人々の日常生活上の習慣ともなっている。皆さんが次回出張や旅行で中国を訪れ、レストランやホテルで食事をする際には、それについて観察してみてはいかがだろうか。