【観察眼】長引くロシア・ウクライナ衝突、秘かに喜んでいるのは誰か
1年余り続いたロシアとウクライナの衝突により、両国では少なくとも10万人以上が死傷し、1000万人単位の人が家を失った。また、衝突が引き起こしたエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)と金融不安で多くの国が苦しめられている。一方で、この衝突により大きな利益を得て、秘かに笑っている者がいる。
米メディアの最近の報道によると、米軍需大手ロッキード・マーチンの責任者は、同社は今年、昨年に続きロシア・ウクライナ衝突から15億ドルの売上を得られるとの見通しを示した。同じく軍需大手のレイセオン・テクノロジーズの決算によれば、同社の2022年第4四半期(10-12月期)の純利益は前年同期の約2倍の14億ドルだった。
ロシアとウクライナの衝突がエスカレートしつづける中、米国の主要軍需企業の株価は2022年、ダウ平均株価の10%下落を尻目に高騰した。米軍需企業のノースロップ・グラマンの株価は40%近く急伸し、ロッキード・マーチンの株価も30%を超える上昇率だった。
一連の数字の背後には、西側諸国による米国製兵器の大量調達がある。西側がウクライナに供給している兵器や装備の大部分はそれぞれの在庫分を割り当てたものだ。各国とも在庫減少分を迅速に補充せねばならない。また、ロシア・ウクライナ情勢のエスカレートは、北大西洋条約機構(NATO)諸国の軍備拡充につながった。必要な兵器の主な調達先は米国の軍需企業だ。米メディアの報道によると、米国が2022年にNATO諸国に売却した兵器の総額は280億ドルに上り、量も価格も2021年に比べてほぼ倍増した。
また、米国防総省によると、ウクライナ危機が発生した2014年以降、米国はウクライナに172億ドル以上の安全保障支援を行っており、2022年2月にロシアとウクライナの衝突が勃発した後も145億ドル相当の支援を行っている。こうした援助金の大半が、米国の軍需企業に流れていく。国内外から大量の注文を受けた米国の軍需企業は、この衝突の最大の受益者となった。
そして軍需企業の背後には、米国における軍、軍需企業、政府、議会などが利益を得るために協力して形成された巨大な利益集団である「軍産複合体」がある。米国防長官オフィスに20年余り勤務したフランクリン・スピンニー氏は、「米国の『軍産複合体』はロシアとウクライナの紛争勃発に対して責任を負うべきだ。『軍産複合体』の利益追求とロビー活動により、NATOは冷戦終結後、再び東に拡大することはしないという約束を繰り返し破ったからだ」と指摘した。
米国の「軍産複合体」が責任を負うべきことはロシアとウクライナの衝突だけではない。欧州から中東、アジア太平洋から中南米に至るまで、米国の政治家は長年「軍産複合体」に突き動かされて世界各地で戦争や紛争を起こし、軍拡競争をあおり、軍需企業のためにビジネスチャンスを生み出してきた。同時に、これらの軍需企業は政治献金や、企業幹部が政府要人になっては再び企業に戻る「回転ドア」の人事を利用して政治家を買収し、政策を牛耳っている。さらに「軍産複合体」は米国の一部のシンクタンクやメディアの協力もあり、巨大な経済と政治上の利益を手に入れ続けている。
米国の反戦活動家のミティア・ベンジャミン氏はこのような状況について、「米国を主導しているのは共和党でも民主党でもない。米国国民でもない。『軍産複合体』に代表される利益集団だ」と単刀直入に述べた。それらの米国の「真のオーナー」らは今、シャンパンを開けて祝っているのかもしれない。或いは、世界のどこかで新たなターゲットを探し始めているかもしれない。