【観察眼】見当違いの米国制裁のムチとはそんなにも便利なものなのか?
米財務省はこのほど、中国の一部企業と個人を制裁リストに加えると発表した。米国側の的外れな覇権主義的行為に対して、中国の外交部と商務部は共に、自国企業の利益を断固として守ると表明した。……もはや見慣れたニュースと言えるだろう。米国はいつだって他国を制裁している。だが、米国が愛してやまない制裁という名のムチは、そこまで便利なものなのだろうか。
米国は世界一の「制裁のムチ愛用国」と言える。2000年から2021年にかけて、米国の対外制裁は933%も増加した。米国はすでに40カ国近くに経済制裁を実施しており、世界人口の半分近くが影響を受けているというデータもある。
だが、その効果はどうか。ここ1年で米国がたびたび制裁を加えてきたロシアを例に見てみよう。ロシアが昨年2月24日にウクライナに対する特別軍事行動を開始したことを受けて、米国をはじめとする西側諸国はロシアに制裁を加えた。今年2月24日までの1年間に、対ロ制裁は新たに1万1458件増えている。だが、これだけの制裁を実施してもなお、ロシアとウクライナの和平を促すことはできず、いまだ戦火が止む兆しはない。
空前の規模で行われた制裁だが、ロシアの立場を軟化させることはできなかった。それどころか、火に油を注いだという見方もできる。ロシアのラブロフ外相はインタビューに対し、「西側諸国のロシアに対する“極端で過激”な措置、“前例のない全面制裁”は、ロシアを徹底的に滅亡させようとするものだ」と示している。これでは、制裁によってロシアの危機感があおられ、結果的に対立の激化を招いたという見解を否定はできないだろう。和平実現のための行動の余地が、制裁のムチによってつぶされたと言わざるを得ない。
米国は、自身との関係が悪い国々にムチを振るう。その例がイランである。米・イラン関係が全面的に悪化したのは、1979年のイラン革命後だ。米国は80年からイランに石油禁輸を含むさまざまな制裁を加えた。その後、米国の対イラン経済制裁は40年以上続いている。そして、この40年以上もの間、米国もイランも態度を軟化することはなかった。両国関係は短期的な対立から2つの文明(キリスト教文明とペルシャ文明、すなわちイスラム教シーア派文明)の長期的な争い、ゲームに昇華してしまったとアナリストはみている。
イランのライシ大統領は13日、同国を訪問したベラルーシのルカシェンコ大統領と共同記者会見を開き、「イランはベラルーシと制裁対応の経験を共有する用意がある」と述べた。イランとベラルーシはいずれも一国主義に反対しており、「独立国家間の建設的なコミュニケーションは制裁対応に役立ち、国家進歩の基礎を築ける」と示している。米国の制裁は国家の進歩を一時的に遅らせるだけで、長期的に見れば他国の発展を完全に阻むことはできず、ただ争いをもたらすだけだろう。
そして中国もまた、米国が度々制裁を科す対象の一つだ。中国に対する制裁は貿易やハイテクなどの重点分野に集中している。だが、ここにも米国の行動が見当違いであったことを示すデータがある。米国の制裁が、中国のハイテク研究開発への投資と成果獲得を促進していることが明らかになったのだ。陝西省西安市にある長安大学の研究チームは2010年から20年にかけて、米政府の制裁を受けた中国のハイテク企業1000社を調査した結果、制裁を受けた中国企業の特許出願件数が平均57.6%上昇していたことを明らかにした。
また、ワシントンに本部を置くシンクタンク・戦略国際問題研究所の報告書は、「米国は制裁政策を通じて短期的な利益を得るが、中国との長期的な闘争では負けてしまう。なぜなら中国企業に独自の技術開発が求められるからだ」としている。マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は最近、米紙フィナンシャル・タイムズのインタビューを受けた際に、「米国の制裁は予想通りには機能しない」とし、「中国が偉大なチップを持つことを米国が阻止できるとは思えない。彼らは時間と大金をかけて自分のチップを作り、5〜10年もすれば、それによってリターンを得るようになるだろう」と述べた。
多国間主義が求められる今日、米国の覇権的思想に由来する一方的な制裁は、粗末かつ乱暴なものでしかなく、国際間の紛争を解決することも、反対者の発展を完全に阻むこともできない。それどころか、長期的には自らが損害を被る結果となるだろう。