天才詩人・海子の歌
彼の詩は、命のすべてを燃やして鍛え上げられた宝石であると称えられます。純粋で美しく、そしてとてもロマンチックで、天性のひらめきを持ちます。そんな海子は真摯な心を世に捧げようとしますが、受け入れてもらえず、生活に苦しむようになって引きこもってしまいます。
この天才詩人の悲劇的な運命は、次の「九月」という詩から感じ取ることが出来るでしょう。
多くの神様の死を見た草原に花が咲きわたり
遠くからの風は一段と遠く
遠くを草原に返す
一つは木切れ一つは馬の尾
遠くには死の中で花が集まるのみ
月が鏡のように草原の千年の歳月を照らす
馬頭琴の泣き声涙も枯れ果て
馬を鞭打ち走らせる
孤独な詩人
海子は、中国の詩の世界でも天才的な詩人の1人でした。彼が命を絶った理由については、今でも様々な説が入り交じっています。青春を燃やして詩を作り、多くの素晴らしい作品を作った一方で、自分を奈落の底に落としていったのでしょうか。そんな、命への想いや孤独への訴えを表す「日記」という詩があります。
この詩は、異郷にいる弟が姉に日記で思いを伝える、といった内容ですが、実はひとりぼっちの海子が、唯一それを分かってくれる恋人に気持ちをもらすものなのです。詩に出てくる「デレーハ」とは、チベット高原の小さな町で、海子の恋人の故郷だということです。
姉さん、僕は今夜デレーハにいるかすむ夜のとばり
姉さん、僕には砂漠しかない
草原の果てで両手に何もなく
悲しむこの時に一滴の涙もつかめない
姉さん、僕は今夜デレーハにいる
この雨の中の寂しい町よ
通り行く人や住む人のほか
デレーハ今夜
ここは唯一の、最後の気持ち
ここは唯一の、最後の草原
僕は石を石に返し
勝ちを勝ちにし
今夜、ハダカムギはそれだけのもの
すべては成長する
今夜、僕には美しい砂漠しかない
姉さん、僕は今夜誰にも興味も無いただ会いたい
海子が亡くなって30年が経ちましたが、詩を命と見なす彼の考えが多くの若者に影響を及ぼしています。1980年代の詩の世界のシンボルと言われた天才詩人の海子。その命が消えて、詩の黄金時代が終わったとも見られています。
番組の中でお送りした曲
1曲目面朝大海春暖花開
この歌は海子の「海に向く春が暖かい花が咲く」という詩をもとにアレンジした同じタイトルの曲です。
2曲目九月
この曲は「九月」を元にアレンジした同じタイトルの歌です。盲目の歌手・周雲蓬の物寂しい歌声が、詩の中の痛ましい心を余すことなく表現し、人々の心の癒えない苦しみを歌い上げました。歌声の中に涙がほとばしる中、心の痛みが癒されるのではないでしょうか
3曲目德令哈一夜
この歌は歌手のダオ・ランが「日記」という詩をモチーフにしたものです。