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なぜいま『論語』か〜早稲田大学教授・渡邉義浩さんに聞く

CRIPublished: 2024-10-22 16:16:08
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もう一つは、『論語』の古注

――『論語』は古代からアジア各国でも読まれていますが、国ごとの読み方の特徴はありますか。

日本は孔子との距離感があると思います。そして一番距離感が無いのは韓国だと思います。韓国では『論語』を信仰として読み、それを直接生活に結びつける意識が強くて、中国はその中間かなと思っています。もちろん、中国はたくさんの方がいるので、様々な読み方がされているのではと思います。

一方、私の考えでは、日本では『論語と算盤』を唱えた実業家の渋澤栄一が読んでいた『論語』は、割合と後世に出来上がった部分だと思います。ですから、信仰としてではなく、資本主義に向き合った時に、どう選んでいくのかを考えながら読んでいたと思います。

――21世紀の今、『論語』を読むことの意義についてどう考えていますか?

日本では自由とか民主主義とか、そういうヨーロッパ的な価値観が、私の小さい頃に信じられていました。しかし、今はそうした価値観が潰れてきて、さまよっている状況です。怪しげな新興宗教に入ってしまう人なども出ています。そういう意味では、日本人がずっと自分の考えの中心においていた『論語』をもう一度見直すというのは、大きな意義があると思います。

私は、『論語』などの漢学が「日本の背骨」を作ってきたと思っています。日本文学というと、仮名文字の方をイメージする人が多いですが、あれはあくまで「仮名」であって、「真名(まな)」は漢文で書かれています。西洋的な価値を見失いつつある現在、『論語』はもう一度見直さなければいけないと思います。

また、日本人には日本人の『論語』の読み方がありますので、それを中国の方に読んでいただくと、文明間の参照になると私は思います。

【プロフィール】

渡邉 義浩(わたなべ よしひろ)さん

1962年東京都生まれ。文学博士。早稲田大学常任理事・文学学術院教授。学校法人大隈記念早稲田佐賀学園理事長。

専攻は「古典中国」学。

著書に『後漢国家の支配と儒教』(雄山閣出版)、『三国政権の構造と「名士」』(汲古書院)、『論語 孔子の言葉はいかにつくられたか 』(講談社選書メチエ)、『三国志-演義から正史、そして史実へ』(中公新書)『三国志事典』(大修館書店)、『三国志演義事典』(大修館書店)など多数。

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