【北京冬季五輪・パラ情報注目の選手①】蘇翊鳴（スノーボード）

第24回オリンピック冬季競技大会は2022年2月4日から20日まで、第13回パラリンピック冬季競技大会は3月4日から13日までの日程で、北京市、延慶区と河北省張家口市の3つのエリアを舞台にそれぞれ開催されます。このコーナーでは、冬季オリンピックとパラリンピックの注目の中国人選手をご紹介します。

蘇翊鳴

2004年2月18日吉林省吉林市に生まれる

2008年4歳でスキーを始める

2018年14歳で中国代表選手に

2020年3月中国人選手として初めてトリプルコーク1620を成功させる

2021年10月世界で初めてバックサイド1980を成功させる

2021年12月スノーボード・ビッグエアW杯米スティームボードスプリングズ大会で中国人選手として初優勝

出場種目：スノーボード・ビッグエア、スロープスタイル

北京冬季五輪のメダルを自分の成人祝いに

4歳の頃から練習熱心だった

蘇翊鳴さんは2004年に中国東北地域の吉林省吉林市で生まれました。スキーを嗜んでいた両親の影響で、4歳からスキーを始めました。とても練習熱心で、朝寝坊をすることもなく、体を痛めても両親に教えないで我慢して滑るほどスキーに没頭していました。そんなスキー少年は、すぐに中国のスキー関係者によく知られる存在となりました。

大人も置き去りの腕前子役として映画出演も

蘇翊鳴さんは9歳の時に、ある映画の子役募集に応募しました。その作品とは、のちに中国で人気を呼んだ『智取威虎山』（日本題：『タイガー・マウンテン～雪原の死闘～』）です。この作品は、1947年頃に中国の人民解放軍が東北地域に立てこもる複数の武装組織をせん滅した史実に基づくもので、スキーができる子役を必要としていました。年齢とスキーの腕前の両方の条件を満たしていた蘇少年は見事合格しました。

彼が演じたのは、解放軍兵士の道案内として、雪山でスキーをしながら武装組織の拠点に通じる道を探すのを手伝うという役で、「大人の兵士にも追いつけないほどのスキーの腕前を持つ子ども」という設定でした。撮影時に蘇さんはそれを難なく演じましたが、実際のところは演じるまでもなく、大人たちは本当に彼のスピードについていけなかったのです。

冬季オリンピック招致成功で抱いた夢

北京が冬季オリンピックの招致に成功した2015年、蘇翊鳴さんは11歳でした。その瞬間を生中継で見ていた蘇さんは夢を持つようになります。それは、プロ選手になって、自国で開催される冬季オリンピックに参加することです。

そして2016年、各地で行われた中国代表選手の選考を兼ねたビッグエア大会で、蘇さんは頭角を現します。その後、2018年に14歳で国家チーム入りを果たし、同年12月には全国選手権で優勝しました。

中国初、そして世界初の大技も次々に決めた

蘇さんは2020年3月の練習で、トリプルコーク1620（空中で縦3周、横4周半回るトリック）を、中国選手としては初めて成功させました。

続いて、2021年1月には中国国内での練習で、バックサイド1800（空中での5回転）を、これも中国選手として初めて実現させました。

さらに、2021年10月、オーストリアでの練習で、バックサイド1980（5回転半）を、今度は世界で初めて成功させました。現在、世界でこの技ができる人は5人未満。その中で蘇さんは最年少です。

次々と記録を打ち立てる蘇さんは、2021年12月、米コロラド州スティームボードスプリングズで開催されたスノーボード・ビッグエアW杯で、中国人選手初の優勝を果たしました。

背景には日本人コーチの支えも

実は、蘇さんの活躍を支える人々の中には日本人もいます。日本の名選手を数多く育てたスノーボードコーチの佐藤康弘さんです。中国側の招きに応じて、数年前から中国選手を指導しています。

佐藤さんは、「中国は今、スノーボードに力を入れている。中国でスノーボードが人気になれば世界のウインターマーケットがもっと盛り上がる。日本でも中国からのインバウンドが増え、ウインタースポーツ界の活性化につながると思い、中国チームのコーチを引き受けた」と話しています。

佐藤コーチについて、蘇さんは「とてもすごい人。日本人選手も含め、世界で活躍している優秀な選手の多くが彼の指導を受けてきた。その指導はとてもやさしい。私たちのジャンプを録画して、その映像を分析してくれる。指の位置、顔の向きなど細かいところまでこだわる、とても信頼できるコーチだ」と語っています。

北京冬季オリンピックのメダルを自身の成人祝いに

北京冬季オリンピック会期中の2月18日に、蘇さんは18歳（中国では成人の年齢）の誕生日を迎えます。蘇さんは、「絶対にメダルを獲得して、自分への成人祝いのプレゼントにしたい」と意気込んでいます。