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COP26開幕を前に「中日は気候変動対応で連携すべき」と両国の専門家

CRIPublished: 2021-10-30 18:41:00
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国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日から英北部スコットランドのグラスゴーで開かれるのを前に、中日両国の環境問題専門家は25日に開かれたオンライン対話で、「気候変動問題においては食い違いよりも協力できることが多く、双方は共同して気候変動問題の解決推進に貢献すべき」という声を上げました。

この対話は、中日間両国としては最大規模の民間対話の場として開かれた「第17回北京-東京フォーラム」の分科会の一環で行われました。両国から出席した8名のパネリストが「国際協調」の分科会において、気候変動対応と自由貿易をテーマにディスカッションが行われました。主催者側の発表によると、オンライン視聴者の人数は約千人に上ったそうです。

第17回北京ー東京フォーラム「国際協調」分科会・北京会場

◆日本側専門家:中国の生態文明と循環経済理念と実践を高く評価

中国人の参加者に強い印象を残したのは、出席した日本側のパネリストたちが、気候変動対応における中国の一連の取り組みと実践を認め、プラスに評価したことでした。

2020年以降の温室効果ガス排出削減等を取りまとめた『パリ協定』が、2015年に採択されました。異なった立場の国が2週間以上にわたり交渉を続ける中、中国は「共通だが差異ある責任」というゆずらない原則を守る一方、各国とも受け入れられる排出削減案の実現に向けて積極的に調整をおこない、『パリ協定』の採択と調印に貢献しました。

パネリスト・玉木林太郎さん

当時、パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)の事務次長をしていたパネリストの玉木林太郎氏は、「在職中は多くの国を訪れたが、2015年前後の中国のスピーチに対する聴衆の反応は非常に強く、これは極めて印象的であった。その後の展開を見ても、それを裏付けるものがある」と振り返りました。

パネリスト・中曾宏さん

一方、今年から本格的な施行となった『パリ協定』は合意から約6年が経過しているにもかかわらず、まだ交渉が完了していない実施細則があり、中でもカーボンプライシングに関する第6条が特に注目を集めています。カーボンプライシングに対する世界各国の関心が高まる中、今年7月、中国は世界最大規模となる温室効果ガス排出量取引制度(ETS)の運用を上海で正式に始めました。日本銀行前副総裁(現大和総研理事長)の中曽宏氏は「ETSの稼働条件に大変関心を持っている」と示しました。中曾氏は、「今はまだ取引額が大きくなく、CO2の価格も欧州と比べるとまだ低いが、制度設計の面においては、測定、報告及び検証(MRV)が常に重視されている。そのうえ、金融派生商品とリンクさせることも視野にある」ところに注目し、今後、排出量取引制度の確立を目指す日本にとっては「有益な視点を提供する」と指摘しています。

パネリスト・石井菜穂子さん

「地球環境ファシリティ(GEF)」の元事務局長で、東京大学未来ビジョン研究センターの石井菜穂子教授は、気候変動という地球環境の危機について、「これまでの経済のシステムが地球のシステムと衝突していることから起こっている」とし、根本的な解決は経済社会のあり方を転換できるかに尽きると指摘しています。また、石井教授は、この問題は、「日中を含め世界の主要な国々が共通して取り組んでいく必要のあるテーマである」としたうえで、中国が早い時期から「生態文明」「循環経済」を打ち出して転換を始めたと高く評価しました。

「今ある経済システムをどのように地球のキャパシティと合わせていくのかという観点から気候変動問題を考えると、生態文明や循環経済といった考え方に則った新しい経済システムづくりが非常に重要になってくる」と石井教授は指摘しています。

石井教授はまた、気候システム、生物多様性、水の循環、森林、海洋など、人類の繁栄を支えてきたグローバル・コモンズに「自然資本」の考えを導入し、値付けを含めて、共同で守るルールを作る「自然を基盤とした解決策(NbS)」の考えの共有を強調しています。「中国は非常に早い時期から生態文明、循環経済という考え方を提案している。ある意味、今、我々がこの分野で求めようとしている解の大きな方向性は示していただいている」とし、「中国のリーダーシップに期待している」と話しました。

第17回北京ー東京フォーラム「国際協調」分科会・東京会場

◆気候変動問題での協同が共通認識に

清華大学気候変動・持続可能な発展研究院の楊秀院長補佐は、石井教授による「自然を基盤とした解決策(NbS)」の訴えに「非常に賛同する」としています。楊秀氏は、NbSは2019年の国連気候行動サミットで採択された気候変動対策の重要9項目の一つに位置付けられており、中国国内では、カーボン排出量のピークアウトとカーボンニュートラルに向けた10大アクションの一つでもあると紹介しました。

パネリスト・楊秀さん

また、楊氏は、「中日は同じ東洋の国であり、NbSにおいて多くの共通理念と協力の基盤がある」という見方を示しました。

「中国は生態文明を重視しており、日本も森林被覆率が高く、自然資源が非常に豊かな国だ。また、自然にやさしい都市づくりにおいて、中国は低影響開発(中国語では「スポンジ都市」)の理念を導入し、都市の貯水・排水システムをスポンジに見立てる取り組みをおこなっている。一方、日本は夏のエアコンの温度を26度以上に設定することなどを呼び掛けている。これらはいずれも自然との調和をはかる発想に基づいた考えと言える」と楊氏は話しました。

10月31日、英グラスゴーでCOP26が開幕されますが、関係筋は、今回のサミットでは『パリ協定』をめぐり、「ラストワンマイルの交渉」がおこなわれると予想しています。楊氏はこれに触れ、「中日がCOP26を含む多国間分野での政策対話と協調を強化すると同時に、同じ低炭素づくりをしている都市同士の協力や共同研究を視野に入れた低炭素技術の共同開発でモデルケースを作る」などとして、期待を寄せています。

中国側からの協力と政策協調の提案は、日本側の専門家の呼応を得ました。石井教授は、インドネシアではパーム油の生産拡大という経済成長の視点から、熱帯雨林を伐採している事例を挙げながら、「自然資本に価格がつき、それが貿易システムの中に組み入れられるようにしないと、食料システムを通じて、自然資本を守ることは絵に描いた餅になる」と指摘しました。そのうえで、「日本も中国も大量消費国で、自然資本を組み入れた貿易システムの確立に合意すれば、これが一つのテストケースになるのではないか」と両国の提携に期待感を示しました。

パネリスト・李俊峰さん

中日両国が今後、具体的に協力を展開する分野について、楊秀氏は循環型経済、低炭素都市づくり、第三国市場でのエネルギー協力を挙げています。中でも、第三国市場での協力をめぐり、中国国家気候変動戦略研究・国際協力センターの初代主任で中国エネルギー研究会常務理事の李俊峰氏は、「すでに成功例がある」とし、中日双方が連携して、アラブ首長国連邦のアブダビ首長国でメガソーラー発電所を建設したと紹介しました。また、李氏は、「これは広く知られるべき成功事例であり、日中双方の技術と資金が共に貢献している。中日はそれぞれカーボン排出量のピークアウトとカーボンニュートラルの課題に取り組んでいる。それだけでなく、いずれの国にも、世界、特にアジア地域の排出削減目標の実現に貢献したいと考えている。我々は共通の目標があるので、食い違いを捨て、協力する分野を多く見いだすことで、気候変動対応により多くの貢献を果たしていく必要がある」と訴えました。

なお、第17回北京-東京フォーラムの開催に先立ち、中国外文局と日本の言論NPOが共同で実施した中日関係に関する共同世論調査の結果によりますと、両国国民が相手国に対する意識は低いままの水準で維持されているものの、中国人回答者の82.1%、日本人回答者の76.2%が、コロナ後の国際協力における中日の連携を重視すべきだと考えていています。この点について、少なくとも、気候変動対応の問題において、ディスカッションを通して見事に実証されたと言えます。

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