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比較の視点から読み解く中国の民法典~JICA長期専門家・白出博之さんに聞く(中)

CRIPublished: 2021-03-24 17:01:00
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ゲスト:白出博之さん聞き手:王小燕

今年から施行開始となる中国初の「民法典」をめぐり、弁護士で、日本国際協力機構(JICA)の中国駐在長期専門家の白出博之さんに法学入門講座をお願いしました。シリーズ2回目は持続可能な発展を目指すべき21世紀型の民法という視点からみた民法典についてです。

◆持続可能な発展を目指すべき21世紀型の民法

――中国で「民法典」が全人代で通過した去年は、日本においては、改正後の民法が施行される年でした。同じく民法の分野の出来事で、隣国で置きた動きを、日本の法律関係者たちはどのように注目していましたか。

白出日本から見て、中国における取引の実務が遙かに進んでいる分野、特に科学技術の進歩が活用されて一般に普及している電子商取引等に関連する問題を、民事基本法である民法典ではどのように規律するのか。これは並行して立法作業が進められ、2018年に成立した「電子商務法」と民法典との役割分担に関わる問題でもありますが、結果として民法典契約編ではネット経済の発展に適応し、電子契約の締結・履行に関する基本的なルールが整備されています。

同様に科学技術の応用という点では、遺言相続の場面で印刷、録画等の新たな遺言形式が追加されている点は注目点の一つです。

婚姻家庭編では離婚冷静期に関する規定の創設は、日本国内の報道でも特に取り上げられていた注目点です。

――そういった動きを踏まえて、中国初の「民法典」の立法理念や条文そのものの完成度について、法律専門家の視点からどう評価しますか。

白出中国の立法機関は、中国の憲法、立法法が定める科学合理的立法、民主立法、依法立法の原則に基づいて、中国の国情と司法実践、大陸法系の伝統的な理論から出発しつつも、海外の立法例との比較法的研究を考慮したうえで、いわば「世界の民法理論と法実践とをリードすることができる、新時代の羅針盤となるべき『21世紀型の民法典』」を目指したものといえると思います。

◆単独の人格権編の設置に大きな意義がある

――「民法典」の中に、白出さんが特に注目している内容がもしあれば、教えてください。

白出私が注目している点には、たとえば、民事主体が享有する民事権利の拡充、保障の強化や、中国社会で問題とされている「違法コスト安、遵法コスト高」という現象に対する懲罰的賠償制度の拡充は、比較法的にはユニークで大胆な手法といえます。また、「第三編合同」ではいわば中国的特色のある合理精神に基づいた法体系の設計になっている点、さらには、弱者的地位にある民事主体の保護の強化、などを指摘することができます。

少しだけ詳しく述べたい点は、最近中国でも話題になっている「第四編人格権」についてです。この「第四編」では、現行の関連の法律と司法解釈等の到達点を基礎として、人格権の具体的な内容・保護方式が規定されています。プライバシー、個人情報保護等については、今後、さらに単行法立法の制定によって、内容の明確化・詳細化が図られるとしても、これらの権利・利益が先ず民法典に明記されたことによって、民事訴訟を通じた権利実現の途が、法律的保障の裏付けを得た意義は極めて大きいと言えます。また単独の編として人格権編を置くことによって、人格権保護の重要性を、人民及び法執行機関に強く認識させる意義も認められるでしょう。

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