米通商代表部は今月20日から27日にかけて、いわゆる「通商法301条」を元にした、中国輸入商品に対する追加関税についての公聴会を行った。多くの企業や業界団体は政府に対し、消費者や企業の利益を充分に考えて慎重に決断するよう求めた。しかし、グローバル経済や自由貿易の発展に注視する関係者は、この数日間で大きな失望感を味わっただろう。
まず、サプライチェーンのシフトについて執拗に質問が出されたが、これは意味がなかった。発言希望者が予想以上だったことから、公聴会は3日間延長して6日間行われた。合わせて46組が質問し、300の企業や業界団体が出席した。
「中国以外に供給源はないのか」「サプライチェーンを中国からシフトするのにどのくらいかかるのか」「なぜ中国の業務をベトナムに移転しないのか」米政府の専門家グループはこの問題について粘り強く質問した。
しかし、追加関税に反対する各企業はこれらに対し「ない」「時間は相当かかる」「質も量も中国に及ばない」ときっぱり答えた。
現在、全世界の貿易でサプライチェーンの占める割合は80%近くに達している。英国の調査会社・マークイットが去年2月に発表したレポートでは、「中国は世界のサプライチェーンの中心」と示されている。安くて質の良い中国商品は米国の中間所得層の暮らしを支えているのである。
また、公聴会で一部の企業が自由化の原則に反してライバルを封じ込めようとした。米国はこれまでに「通商法301条」に関わる公聴会を3度実施しており、小売業、アパレル、食品加工、機械製造、半導体チップなどの業界では大部分の企業が追加関税に反対しているが、鉄鋼やアルミニウムの製造業者数社が逆に、中国企業の締め出しを狙って通商法232条のほかに同301条の分についても課税を求めたのである。
そして、世界貿易機関(WTO)の主な初期加盟国である米国はかつて、301条の発動は控えると約束していたが、今は国内法をバックに単独で貿易制限を行いつつ、対抗措置として500億ドル分の米国商品に追加関税をかけた中国を違法であると非難し、これを理由に2000億ドル分の中国輸入商品に追加関税を課そうとしている。
公聴会はすでに終了したが、これは米政府が追加関税を実施する前の単なる定例行事であり、決して政府の決断を左右するものではない。反対の声が圧倒的多数を占めたにもかかわらず、政府は一方的に決断を下した。米国の企業や消費者は、失望感どころか絶望感を味わうだろう。(国際鋭評コメンテーター)