北京原人の化石が出土した「猿人洞」の山頂近くに「山頂洞」といわれる洞穴があります。1933年に、ここで「山頂洞人」の化石が発見されました。1935年から、著名な古人類学者・賈蘭坡の指揮により、ここからヒトのかなり完全な頭蓋骨3個と、骨盤、大腿骨などが前後して発見されました。
山頂洞人が生息したのは、今から2万7000年前です。現生人類に属し、体質の特徴は、基本的に現代人と同じと考えられています。頭蓋容積は約1300~1500ミリリットルと、まさに現代人の平均容積の範囲内にあたります。男性の身長は約174センチ、女性の身長は約159センチで、現代人に相当する高さです。
残念なことに、1937年前に発掘された頭蓋骨5個が行方不明になったのです。これらの頭蓋骨は、北京協和医学院に保存されていましたが、当時、旧日本軍がまもなく北京に攻め込むと見られ、これらの貴重な化石が日本侵略軍に持ち去られないよう、アメリカへ輸送して、一時保存する計画がありました。1941年12月8日、太平洋戦争勃発、日本軍はただちに北京や天津にあるアメリカの関係機関を占領しました。そうした混乱期に、原人の化石が行方不明になったのです。
しかし、1966年、裴文中氏の発掘チームが周口店遺跡で再度発掘を行いました。結果としては、原人の頭蓋骨破片2、歯1、石器173、数多くの動物化石が発見されました。
1966年に発掘された頭蓋骨の破片と、1934年、1936年にそれぞれ発見された2つの頭蓋骨破片が、ほぼ完全な1つの頭蓋骨に組み合わされたことになりました。それらは、同じヒトに属していたという事実が明らかになりました。これこそが、中国に現存する唯一の北京原人の頭蓋骨です。1987年、北京原人遺跡・周口店は、世界遺産に登録されました。北京原人の頭蓋骨は、きわめて貴重であったため、発見後、一般に公開されたことはありませんでした。しかし、発掘後、37年がたった2003年9月21日から10月7日まで、周口店北京原人遺跡博物館で、国内で初公開されました。
皆さん、人類の起源に興味があれば、是非、東アジア文明のあけぼのとなった北京原人遺跡・周口店をお訪ねくださいね。
二時間目 周口店周辺の有名な観光地と北京のグルメ
周口店のある北京房山区の地理情報、交通アクセスなどをご紹介します。その後、房山区の有名な観光スポットである石花洞(鍾乳洞)と十渡(リゾート地)をご紹介します。さらに、北京の代表な料理の北京ダックの歴史とその流派などをご紹介します。ぜひお聞きください。(任春生)